ROCKHOUND日記
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2005/05/22(日) 天使のハンカチ
三回目のROCKHOUND開店日。

夜7時。
…雨。しかも微妙な小雨。降ったり止んだり。
他の露店も今日は姿をみせない。
…今行ったら俺らの商品がびしょ濡れになっちゃうかも…。
…今行ってもお客さんは雨の中止まってくれないだろう…。
煮え切らない会話が続く…。
『あー!!もぉ関係ねぇ!!』
俺とNOBUは雨の中シートを広げた。
悩んでだって何も始まらない!!とりあえずやっちまえ!!

二人でどうにか商品を濡らさない工夫をしようとやいのやいの言い合ってたその時、
一人の女性が俺らの前に座った。綺麗な人だ。
『…いらっしゃいませ』
しどろもどろな挨拶もつかの間女の人が口を開く。
『DVDと…あと詩のポストカードも全種類1枚ずつ下さい』
…俺とNOBUは唖然とした。来店30秒で…。
『は…はい!!』
『この…上の…BRAK HEART CARD…っていうの…』
『あっ、はい!!オリジナルの写真に俺らがあの…熱い言葉を書いたもので…』
『それも置いてあるの全部下さい』
ど、どうなってんだこりゃ…、何かのドッキリか?
戸惑いと嬉しさの入り混じる中、商品を渡す。
『…えっと…全部で1150円になります』
『はい。お釣りはいいです』
出て来たのは福沢のゆきっつあんだった。
『…いや、あの…!!』
『二人で美味しいもんでも食べて下さい』

その女の人は、
『これで濡れた商品でも拭いて下さい』
って、ハンカチを僕らにくれた。
さらに、
『そこで買ってきたんです、差し入れ』
って言って、ミックスサンドウィッチを僕らに渡し、去って行った。
…と、すぐに小走りで戻ってきた。
『…はぁはぁ。…あの、これ。今買ってきたんです』
俺らの前に2本の傘とビニールシートが置かれた。
『あ…あの…』
『ファンなんです。…二人のHPをずっと見てて。』
HPってのはこのHPよりずっと前…1年ぐらい前からある、俺らの日記などをのせたHP【ブルスポック】のこと。
『あの…お名前は?』
女の人は笑顔で首を振った。
『あなた達にいつも元気もらってるんです』
こうしてその名前もわからない僕らの天使は去って行った。

マジな感動ってのはきっとこうゆうのを言うんだろう。
マジなHAPPYってのはきっとこんな感じなんだ。
雨もあがった。

はいっ、ちょっと黄昏ちゃいました…
…天使が去ってからはもぉートラブル続きのオンパレード!!


夜9時。
警官がやってきた。
『困るねぇ、こんな所で商売はぁ…』
食ってかかった俺に警官は警告書を取り出し、
『今度見つけたら逮捕するから』
と凄む。
『俺らはやめませんから!!』
警官が呆れ顔で去っていく。
横を見るとNOBUも呆れ顔。
『あほかぁ、お前適当に誤っとけや』
『だってムカツクやん!!』
NOBUとの喧嘩勃発。こいつとはしょっちゅう喧嘩する…。


夜9時半。
喧嘩のせいで空気もどんより。
そのおかげかお客さんも全くもってナッシング。
たまらず口火をきる俺
『ごめん』
『いや、俺も…気持ちは分かるで。俺もムカツクし。あいつら、俺らがどんな気持ちでやってるかとか、そんなん無しでただ業務的に注意してくるだけで…俺らはしたい事をしてるだけやのにな』
『めんどくさいなぁ』
『うん』
『でもめんどくさいから楽しいみたいなとこあるよな』

NOBUとの喧嘩はいつもその日中に仲直りする。
次の日まで持ち越した事なんてない。
一番のライバルで、一番の理解者で、一番喧嘩しがいのある奴だ。


夜10時。
路上でのLIVEは夜10時半からと決まってる。(渋谷駅前のLIVEを取り仕切る「音遊会」の規定)
NOBUがアンプを取り出す。
この前はアコギで演奏したんだけど、そこは渋谷、騒音で聞こえやしない。
ってな訳で、NOBUは5万もの大金を払って3日前にアンプを購入。
そいつで今度はぶちかましちゃる!!って訳だ。
まだ10時過ぎだったけど、
『ちょっとぐらい早くても行けるっしょ!!』
ってノリで始めちゃう事に。
アンプからNOBUの曲が渋谷ハチ公前に響き渡る。
『渋谷をご通行の皆様始めまして、ROCKHOUNDのNOBUです』
渋谷駅前を忙しそうに歩く人、ハチ公前で待ち合わせなんかをしてる人達がNOBUを見る。
うっひょー…、きたきたきたぁ、なんか俺まで緊張しまくりだ!!

そしてNOBUがかつてない大舞台で歌いだした。
…が!!直後!!
同じく露店をやってた和服のおっちゃんがすごい形相で駆け寄ってきた!!
『路上LIVEは何時からやっていいの?』
『10時半です』
『今何時!?』
『10時です』

…あっとゆう間の演奏中止。


夜10時半。
他のバンドがハチ公前で演奏を始めた。
フルバンドの生演奏。
さすが東京、クオリティの高いこって、あっとゆう間に黒山の人だかり。悔しさと、はがゆさが入り混じる。
また警官が来た。フルバンドの人らは警告書にサインをしてる…やれやれだ。


夜11時。
警官の目から逃れ、渋谷ハチ公前の裏側、モヤイ像前へ。
こっちは人通りが少ないのなんのって…。
『やろう。一人でも立ち止まってもらおう!!』
NOBUが歌いだす。
誰も止まらない。みんな足早に通り過ぎていく。
モヤイ像の前、NOBUは自分の歌を精一杯歌い続ける。
誰も止まらない。

3曲全部歌い終わった。
NOBUの後ろからひとつの拍手が聞こえた。
駅の近くを寝床とする真っ黒な顔のホームレスのおじさん。
『名前は?』
『NOBUです!!』

夜12時。
俺とNOBUはとんでもない量の疲労感を引っさげて終電に揺られる。
NOBUは俺んちで泊まる事に。
今日もらった<天使のハンカチ>を部屋の壁に貼り付けた。

自分達を信じよう。
傷つくのが青春ならいくらでも傷ついてやる。
どんなにヘコんだって、どんなに壁がでかくたって、後ろは振り向かない。
後ろには夢がないから。
疑わない、1ミリたりとも。自分達の決めた道を信じる。

どうしても叶えたい夢があるから。
天使がくれたミックスサンドがバカみたいにうまかったから。


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