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2005/11/15(火)
無題
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世界が表情を変えた夜にあの歌をうたおう。 北の窓はどうか開けないで。悪い空気が入ってくるから。 ちょっとあんた、あの星座が見える? 同じ空の下でこんなにも違うなんて。 南の窓から誰かさんの報われない恋の話。 愛を語らう生ぬるい風に吐き気がする。 何もかもがフワフワ宙を漂っていて なんだか楽しそうだったけど、着かない足をじたばたさせて 無重力でぶくぶくの醜い塊を見て笑った。 東の窓の下を大量生産されたブリキの玩具が 列を作って規則正しく行進しながら 道徳やら背徳やらを叫び通り過ぎていく。 なんて滑稽で愛らしい。 何もかもが飽和状態。 頭は働かないのにやたらと重い。 誰かが手品か何かで頭の中身を消し去って 変わりに石を沢山詰め込んでいってしまったに違いない。 何もかもが矛盾だらけ。 同じ国に生まれながら言葉の通じない醜い塊は 相変わらずフワフワ浮いていて どこもかしこも欲求肥満渋滞。 何もかもが飽和状態。 西の方から目の覚めるような大きな銃声。 子供の泣き声、地を這う音と痛みに呻く声。 全ての空は深い紫に変わり、それを包み込むように 分厚くてどす黒い煙の様な雲が世界を覆う。 やがて北風が悪魔を連れてくるよ。 醜い塊は血の雨を降らせ、ブリキの玩具は溶けて 臭い毒ガスを放つ。 ひしひしと迫りくる未来。 君が黙って座っていてもやがて訪れる。 そして君の有り触れた退屈な日常が終わるよ。 こんな夜には私はあの歌をうたおう。 あの歌を口ずさんでお前らに唾を吐き掛けよう。
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