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2008/10/14(火) “雪村食堂物語”第二夜


「おっちゃぁん!!」


女の子のよく通る声がしたのと
店のドアがガラガラと煩く開けられたのはほぼ同時だった。


実家の定食屋を手伝い出したのはつい先週。

女の子が口にした“おっちゃん”とは
どうやら店主である私の父のことらしい。



「あっちゃん、おめぇまーた喧嘩したんか?」



女の子はこの定食屋の常連のようで、
黒くて長い髪をなびかせながら
一目散に父のいる厨房近くのカウンターに座った。



「だって!となりのクラスの女子が喧嘩売って来たんだって!
…あ、今日はカツ丼ね。」


父は あいよ、
と返事をすると黙々と食材を用意する。

すると、つい今私がオーダーを取ったテーブルの
鳶職の男が“あっちゃん”に向かってヤジに似た会話を飛ばす。



「あっちゃんもうあと数ヶ月もすりゃ小学校卒業すんだろ?」


あぁそうだ。と
彼女は自分の親と同じくらいもしくはそれ以上の歳の男と対等に会話している。



「そんな顔まで怪我して。
ちったぁ、お姉さんなんなきゃだなぁ?」

「余計なお世話だ!」



小学生にしては整った容姿に
堂々とした態度。

ただ茫然とその光景を眺める。


私の知らない世界が広がるこの小さい定食屋の中で

私は取り残されたかの様に
ただやりとりを眺めていた。



「あれ?!」



突如、観覧席から舞台に引きずり込まれた

少女と目が合ったのだ。



「ちょっとおっちゃん!
この綺麗なお姉さん誰?!」



白い三角布を巻いて
可愛げのないエプロンを引っ掛けただけの私を綺麗だと言う。

父にそう語る少女はまるで井戸端会議をする近所のオバチャンの様な手振りだった。



「オレの娘だよ、先週から店手伝ってんだ。
お前、先週顔見せなかったろ?」



父の答えに対し、
へぇぇぇ!とオーバーなくらいに気持ちいいリアクションを返す。



「私、浦飯温子ってんだ!お姉さんは?!」



瞳を輝かせるとは、こういうことを言うのだろうか。
カウンターの席から落ちそうなほど身を乗り出して尋ねる姿は年相応だ。



「私は雪村せつ子よ。」



すると
さっき以上のリアクションが返って来る。



「きゃあー!名前一文字違いじゃん!!」



どうやら、箸が転がるのも面白いお年頃らしい。

彼女ははカウンターに掴まりながら笑い続けた。



「せつ子ならせっちゃんだね。
せっちゃんはいくつ!?」


ほんと元気がいいなぁ。

私はしゃべり続ける彼女の質問に答えた。


すると
今までの勢いがピタリととまる。



「あれ、どうしたの?」



彼女は軽く笑顔が引きつったまま言う。



「わ。意外とおばちゃん…」




…黙れ。




そりゃね?
小学生からみたら10以上も歳上ならそうかもしんないけどね

でもね……



バンと大きな音をたててカウンターに両手を着くと
私は厨房に向かって叫んだ。



「父さん!!
温っちゃんのカツ丼カツ抜きねっ!!」


「…せっちゃん…!!」



不思議な子だった。
自分より半分しか生きてないのに

なんの気兼ねもなく通じ合えた。



これが浦飯温子と
私 雪村せつ子との出会いだった。



《第三夜へ》





*** 
お詫び 

連続とぬかしながら。 
明日早朝から一泊かけての現場にお呼ばれしてしまいました。 
《第三夜》は明後日更新の可能性濃いです;;
見てくださっている方、
もしいらっしゃいましたら 
ご了承くださいませ…
申し訳…!!


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