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2005/06/27(月)
天国への階段
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リビングでゴロゴロしていた。 目が開いているのが不思議なぐらい脳ミソは仕事をサボっていた。
カサ・・・。 不意に視野の端に黒いモノが映った。
条件反射で俺のカラダは飛び起きた。 微弱電流がカラダを駆け巡った 全身が冷たい感覚に襲われて、頭のてっぺんからつま先の毛細血管までが収縮し脳に血が集まっていくあの独特の感覚だ。 が、肝心の脳ミソは突然叩き起こされて何が起きたのかすら分かっていない。
見返すと、黒いモノは消えていた。 気のせいか・・・?
いや!確かにヤツはいる!! 25年培ってきた俺のカンがそう言っている。 俺の動きを警戒して身を隠しているだけだ! 今も物影から俺の動向を探っているハズ。 少しでもスキを見せれば死角から飛びかかって来る!
本格的に目覚めた脳ミソは一気にアドレナリンを分泌した。 急激に感覚が研ぎ澄まされていく。 まさに※「蚊のまつげの落ちる音まで聞こえる」ほどだ。 風の音に紛れてかすかに聞こえる。
カサ・・・カサ・・・
そこか!! 物影に向けてジェットを噴射。 ヤツは燻し出されて、すばやくテレビの後ろへ逃げ込む。 一瞬見せた姿は、紛れもなく現存する全ての生物の中で俺が最も忌み嫌うモノだった。 ドス黒く光る背中に無条件に吐き気を催し、ヤツ等の殲滅せんことを心より願う。
――だが不思議なことに、ヤツと対峙したとき、俺の中には50%の嫌悪と49%の恐怖と1%の(適当な言葉が見つからないが)何か友を懐かしむような「よう、また会ったな」みたいな気持ちがあった。 昔、友人が唱えた「アンチ巨人は、隠れ巨人ファン理論」を感覚として理解した。 同時に、「ものごとが白か黒かだけではないこと」を悟った。 また一つ目指すところに近づいたようだ。――
だがしかし、今そんなものは所詮1%の感情。 俺は再びテレビの左右から挟み撃ちジェット噴射。 たまらずソファの方へ逃げようとするヤツの動きは鈍く、俺は勝利を確信した。
結局ヤツは近代化学兵器の前に反撃する間もなく屈した。 今シーズンの第1戦目は完勝といったところか。 できることなら今シーズンはこの1戦だけで終わりたいのだが・・・。
※第258段 大蔵卿ばかり耳とき人はなし 大蔵卿ばかり、耳とき人はなし。まことに、蚊のまつげの落つるをも聞きつけ給ひつべうこそありしか。
せっかくなので続きもどうぞ。↓ 職の御曹司の西面(にしおもて)に住みし頃、大殿の新中将、宿直(とのゐ)にて、ものなど言ひしに、そばにある人の、「この中将に扇の絵の事言へ」とさゝめけば、「いま、かの君の立ち給ひなんにを」と、いとみそかに言ひ入るゝを、その人だにえ聞きつけで、「なにとか、なにとか」と、耳をかたぶくるに、遠く居て、「にくし。さのたまはゞ、今日は立たじ」とのたまひしこそ、いかで聞きつけ給ふらんと、あさましかりしか。
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