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2006/05/06(土)
亡霊
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数日前、亡霊と知り合いになった。
初めて彼に会ったとき、ものすごく柔らかい空気を感じた。 私はそんな彼に好印象を抱いた。
数ヵ月後、彼はまたふらりと現れた。 しばらく言葉を交わすうちに彼が亡霊であることがわかった。
魂が行き場を求めて現世を彷徨っている。
私の密かな心配は、「この魂の落ち着く場所がこの世界にあるのか」ということだった。 だが数十分の彼との話の中で、私はその心配が無意味であることを悟った。
その場所がすでに存在しないことを彼は知っていた。
彼の魅力は「求めて止まないものが存在していないということを憂いながら、受け入れ、更には愉しんでさえいる」という部分なのだ。
そういう大人の愉しみ方が出来る彼を素直に羨ましいと思った。
そういう生き方(=死に方)を恐怖し、憬れるのは私がそこに属していることの証なのだろう。
彼は旨い酒を呑むだろう。 彼は無言でタバコに火をつけるだろう。 彼は静かに語るだろう。 そして彷徨い続けるだろう。
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