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2005/03/01(火)
猫の丘
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僕の仕事場は、最寄り駅からは、歩いて25分程の距離にある。 バスも通ってはいて、乗ればそこからの歩きを併せても15分位で着くのだけれど、 いつもの出勤時間であれば、5分ほどバス停で待つことになり、 たかだか5分の為に小額とはいえ、お金を出すのもなんだか悔しい。 そもそも、僕は結構歩くのが好きで、2時間3時間歩き続けるのも割と平気なほうだ。 いや、負け惜しみとかではなく。
そして、職場へと歩く道すがら、その丘はある。 丘といっても、そこだけが丘という訳ではなく、駅から見れば、その辺り一帯がなだらかな小山のようになっていて、 その頂上辺りに高さが1メートル位あるコンクリートの土台の上に茂みがあるというようなくっきりと区切られた丘なのである。 周りは密集はしていないものの、マンションや、やや大きめの住宅があり、その間に竹林や空き地がまばらに散っている。 そこに彼らは住んでいる。
朝や昼といったまだ明るい時間帯は、どこでどうしているのか、あまり彼らを見かけないが、 仕事が少し遅くなり、辺りが夜に包まれると、 彼らは目をぎらぎらと光らせて、茂みの中からこちらの様子を伺っていたりする。 その小高い区画へ入るための、スロープ状の入り口には、 誰が置いたか、紙皿などに猫の餌のカケラが入っていたりする。 入り口よりすぐ奥からすでにススキやセイタカアワダチソウや名前の解らない茂みで覆われ、 人間である僕には入るのがためらわれてしまう。 もちろん、彼らも入っては欲しくないだろう。
「ひげよ、さらば」という、野良猫たちを主人(猫?)公とするこの小説がある。 ここに、「ナナツカマツカ」という不思議な響きの場所が出てくる。 そこには主人(猫??)公である記憶喪失の流れ者ヨゴロウザや、 癖の強い猫たちが住み、お堂や池なんかがある。 近くを通るたびに、お堂や池は無いけれど雰囲気は丁度、 この丘のような場所なのだろうか、と考えてみたりする。
小説中の猫達も、そこの猫達も、愛玩動物、というにはあまりにもやさぐれた表情を見せる。 今、僕の膝の上で、喉をごろごろと鳴らしながら偉そうなため息をついた家猫とはえらく違う。 そんなことは、やさぐれた彼らにはどうでもいいことか。
都心部からは離れているために、そういった茂みや小さな森が、まだ散在してはいるものの、 最近、マンションや一戸建ての家が増えてきている。 エコとかそういう大げさな事を無責任に言うつもりはないし、 そこに住みたいと思う人を止めるつもりも無い。 なにより止めようも無い。 とりたてて、彼らに愛着があるわけでもなく、日ごろからその事ばかり考えているわけでもない。 ただ、ただ、こういう丘のような「遊んでいる」場所も、残っていて欲しいな、とたまに思うのだ。
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