|
2005/02/04(金)
agony
|
|
|
●ある日の日常。 「あはは」 「あはははは」 「……」 日常が日常である時、それは日常である。 雑多の多い場所で、 喧騒の多い都会で、 今を生きている日常。 そんな日常がここにはある。 束の間の休息という言葉は少しの休憩と置き換えることができる。 それはほんの一瞬で、ほんの数瞬で、 あっても無くてもさほど変わらないように思える。 だが、そう思わない者もいる。 それはその一瞬をとても好きだと思える者。 その束の間の瞬間がとても心地いいものだと言える者。 それがまたの日常。 日常の人間。
ある種の疎外感から人は急に喋られなくなる。 事務的な事すべてではなく、自分はそこにいて良いのだろうかと思うようになる。 それは自分が他の人間とは違っていて、 他の人間が自分とは違うと思えるからだ。 思う、ではない。 そう本能的に感じるのだ。 それに気づくのは随分と早いかもしれないし、随分と遅いかもしれない。 しかし気づいてしまった時から、その人間は変わる。 他人は何も変わってはいないのに、自分は違う自分になってしまうのだ。 それは言ってみれば大きな勘違いだし、誤解している。 だが、自分の感情をコントロールするには自我が足りなさ過ぎた。 人間の自我の限界を超えてしまった者は、狂う。 狂い、狂って……狂気の淵へと叩き落される。 それがどんなにひどく、辛いものかはなってみないとわからない。 痛みなんて、ない。 ただ、体中に這い回る歪な何かが自分を感じたこともない不快感に陥れる。 それが何なのか考える余裕すら無い。 今、自分にできることは、この狂気から逃れることだけ。 息をする。息ができない。 呼吸が困難になり、空気を欲する。 酸素の循環が遅れている。 必死に手を伸ばすが、そこには何も無い。 狂ったように走り出す。 しかし逆に体力を消耗するだけだとは自分では気づけない。 そしてついに限界がきて、倒れ、悶え続ける。 苦しい喘ぎ声を上げ続けるが、決して死ぬことはない。 これは単なる日常だから。 狂気ですらその人間の脳の奥の妄想物でしかない。 だが、人間はここまで残酷な仕打ちを自分に仕掛けることができるのだ。 それは本当は、他人への抑制かもしれない。 本当は恨んでいるのかもしれない。 自分を疎外感に悩ませた奴等を地獄の底まで叩き落したいと思ったのかもしれない。 しかし、それはしなかった。 その代わりに出た自分への代償が、自分をここまで苦しませる。 だが、これはやはりただの疎外感なのだ。 疎外感という言葉一つで人間をこうまで狂わせる。 悲しい、悲しい……一つの日常。
「やぁ、久しぶり」 「あっ!おじちゃん。こんにちわ!」 「おぉ、あの小さな女の子がよくここまで大きくなったもんだ」 「えへへー」 「今日はどうしたんだい?」 「お買い物」 「へぇ、えらいねぇ。お母さんの?」 「うん」 「お買い物に行ってからどうするんだい? まだ昼前だけど」 「今日はずっと家で遊ぶんだ。借りてきたビデオ見るの!」 「へー、どんなビデオかな?」 「動物がいっぱい出てくるビデオなの。それで、終わったらゲームするの。 最近お母さんがいっぱいゲームやっていいって言ってたから今日はずっとやるんだー。 多分今日じゃ終わらないと思うから、明日も、あさっても、その先もずーっとやるんだ。 それが終わったらお父さんが新しいゲーム買ってくれるって言ってたから新しいゲームも買ってもらうんだ。 楽しみだなぁ。分からなかったらインターネットで調べるからね」 「へ、へぇ…」 「インターネットって便利だよね。ゲームの事も調べられるけど、すごいよ。 変な画像とか動画もいっぱいみられるんだから。 こないだなんかタカシ君が死んじゃった動画見つけたよ。 すっごく怖かったけど、我慢してみたよ。えらい?」 「え……」 「最初は怖かったけど、いっぱい見てるうちに面白くなってきちゃって、色々見始めたの。 そしたらユリちゃんとかヤスコちゃんに似た女の子が一緒に包丁で刺し合って死んでたの。 でも二人とも違う人だもんね。こないだ一緒に帰ろうって言ったのに、 一緒に帰ってくれなかったからちょっと嫌だったけど、やっぱり死んでたら嫌だよぉ」 「……」 「それでね、それでね。今度はお兄ちゃんに似た人がバラバラになってる動画を見つけたの。 こないだお兄ちゃんに殴られたからすごくむかついたの。 でも、こうなったお兄ちゃんは見たくないなぁ。でもちょっとくらいなら見たいかも……。 赤く染まったお兄ちゃんって、ちょっとカッコいいかも。それでね…………」
……
…………
……………………
|
|
|