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2007/02/17(土)
玉響SS * 夕貴
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(やっとだ――やっと、会えた) 久しく湧き上がったことのない歓喜に、夕貴はそっと自分を抱きしめる。 彼――穂積透夜がこの地に足を踏み入れたときから、夕貴の心は躍った。春が来ても夏がめぐってもしんと閑まりかえっているこの地と同じく、夕貴はずっと、季節の喜びからは縁遠い日々を過ごしてきたけれど、待ち焦がれた喜びが、胸ばかりか体中をめぐる。 熱に浮かされたようにぼっとする感覚は、いつもの気だるく陰鬱な体の不調とは全く別のもので、滝で禊をしているときにも、そして夜が更けて独りの家で、ぽつんと床についた今でもそのざわめきはおさまることがなかった。 「くす」 眠りの吐息の隙間から、笑みが零れ落ちる。 透夜が、夕貴を見て笑いかけたからだ。 (浴衣も案外似合うね) 神代の庭先で、眠れないのか夜空を見ながら佇んでいる様子の透夜を、そっと物陰から見ている夢を見ている。 これが夢だと自覚しているのは、何だか不思議な気がするのだけれど、それでも、まだ合間見えていないのに、こんなにもリアルに透夜を見つめることができるのは、何だか得した気分になる。 ふと、透夜が、こちらに気づいたように、そっと笑んだ。 ふわりと咲くように笑う顔は、どことなくまだ幼い気がした。 (ああ、早く……) 夢を見ながら、夕貴は早く明日にならないかと思う。 今日は、実際に会うことは叶わなかった。ただ、滝で禊いでいるときに、ふと透夜の姿が過っただけだ。そして今、見ている夢だけだ。 けれど、きっと明日は実際に、透夜に会うことができるだろう。そうするつもりだ。 (透夜……とうや) 夕貴はそっと、布団を手繰り寄せ、抱きしめるように腕にからませた。 早く朝が来ればいい。 早く――。
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絶賛「玉響」プレイ中。 つーか仕事やれよー! 二次創作サイトないみたいでがっかりですよorz 読みたいー、もっと読みたいー! なにがって 透夜と遼のその後のイチャイチャが!
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