ぷちしょーと
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2006/10/29(日) ぐだぐだ
 それはあまりにも唐突だった。
 ドアの鍵を開け、真っ暗な玄関に一歩、入るか入らないかの時、いきなり両手首をつかまれ、身体を壁に押し付けられた。
 すぐ横に、玄関のライトのスイッチがあったけれど、あんまりの出来事に、僕はスイッチをなんとか着けるということを失念してしまっていた。
「っ――!」
 叫ぶ前にくちがふさがれる。
 手じゃなくて、生暖かい、粘膜。
 それが、ふさがっている僕の口と、同じものだということに気がつくのに、少しばかり時間がかかった。
(なに――?)
 混乱した頭を、何とか整理しようと首を振る。叫ぼうにもくぐもった声しか出てこない。そのうち舌が入り込んで、口腔をまさぐり始めるけれど、パニックを起こした僕は、その舌を噛み切ってやるという選択肢を思いつかなかった。
 なんとかしなくちゃ――その思考だけがあたまをぐるぐると攪拌して、あまり意味もない、今日の帰宅ルートだけが走馬灯のように浮かんでいた。

 いつものように、店が終って、僕は、明日の仕込がある三原さんを残して、先に店を出た。今日の夕飯(といっても、夜食くらいなものだけれど)と、明日の朝食用の買出しを頼まれていたから、駅前のスーパーの寄った。美味しそうなアボカドがあったから、これも買った。三原さんにアボカドのグラタンを作ってもらおうと思って。
 ついでに小エビと(すっかりグラタンを作って貰う算段なのが分かるかもしれない)、それから白ワインと三原さんの好物のチーズを発見したから、これも買って。そんな事をしていたら、結構時間がかかってしまった。ひょっとしたら、もう三原さんが帰っているかもしれないな――なんて考えながら、早足で三原さんのアパートに向った。
 明かりがついていない様子から、三原さんはまだなんだと思って、少し安心する。
 「おかえりなさい」と言われるのも好きだけど、三原さんに「お帰りなさい」と言うのが僕は好きだ。そう言うと、三原さんは照れくさそうに、でも嬉しそうに、「おう」と言う。その顔が可愛らしくて密かな楽しみだったりする。

 そして――。

 ドアを開け、唐突に、誰かに身体を拘束されたのだ。
「ンぅっっ――」
 いくら身じろいでも、相手はかなり力が強いらしく、どうやっても振りほどけない。そのうち、がっしりと僕の腰を挟んでいたそいつの足が僅かにずれて、僕の足の間に――。
「――っ!」
(三原さんっ!)
「ハッピーハロウィン」
 緊張がピークに達した丁度そのタイミングに、不似合いなほどのんきな声でそう告げられた。声は三原さん。
 呆然となっている僕は、すでに唇はふさがれていなかったのに、声を出す事も出来なかった。
 僕のひじ辺りにあるところで、「パチン」とスイッチの入る音がして、ライトがついた。目の前で僕を拘束していた人物は、見原さんの顔でいたずらっぽく笑っていた。いや――三原さんだったのだ、犯人は。
「――なに、これ」
 僕はへたりと玄関にへたりこんだ。
「なにって、ハロウィンのイタズラ」
 自分も僕と同じところまでかがんで、真面目な顔(というんだろうか)で三原さんが答えた。
「で、こっちがお菓子」
 ほい、と手渡されたのは、黄色い星型のクッキー。きっとかぼちゃの味がするに違いない。
「ほん――っとに、びっくりした」
 考えてみれば、玄関のライトのスイッチはすぐ脇で、僕が少し身体をずらせばライトがついたはずだ。そんなことも気付かないほどパニックを起こすなんて、ありえない。
「なんかもう、思わずあなたに助けを呼んじゃうところだったじゃない」
 実際にそうしていたら……あまりにも滑稽すぎると、悪趣味すぎるイタズラを仕掛けてきた三原さんを睨みつけると、全く悪びれない顔で、
「悪い悪い」
と笑った。
「そんかわり、お前の好きなもん作ってやっから、機嫌直せよ」
 な? と言って、少し眉を下げながら、頬にキスをくれる。これで機嫌が直ると思ってるのがバレバレだ。
 僕はやれやれと、ため息をつく。機嫌が直ったと思ったのか、三原さんが少しばかり、ほっとした顔をしたところに、僕は報復に出た。
「――っ」
 呆けた顔の三原さん。その唇を、ちょっと強めに噛んでやる。
 ビックリして飛び退った三原さんに、ニッコリと笑った。
「続きは後でね?」
 甘い「お菓子」かそれとも「イタズラ」か。
 次に選択権があるのはきっと僕、だよね?


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