ぷちしょーと
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2007/02/06(火) くるくる。
 そろそろ潮時かもしれない。唐突にそう思った。
 この場所は、大好きだけど、「代わり映えしない」と思ってしまうと、途端に日々は色あせて、新鮮さがなくなる。
 大好きだったあの人のキスも指も、温もりさえも、単に生理的な快楽を引き出すだけで、そこにときめきがないことに気がついてしまうのだ。

「もう、終りにしよう」

 自分の言葉で、一気に目が覚めた。
 ギクリと目を開けると真っ暗な闇と、乾いて硬いけれど柔らかな、自分より少し高い温度を素肌に感じる。
 ここが三原さんちで、三原さんのベッドで、僕を包んでいる温もりが、三原さんの体温で、触れ合っているのが三原さんの体だということを認識して、僕は安堵のため息をつく。
 それから――三原さんに安心する自分に気がついて、それにほっとする。
(寝言……言ってなかった、よね?)
 夢の中で、冷ややかに呟いた言葉を思い出して、ぞっとする。すると、さっきまで暖かかった体が急に肌寒く感じて、僕はぶるっと身震いした。
「ん……」
 僕が身じろいだからなのか、三原さんがもぞりと動いた。三原さんは、目こそ開けなかったけれど、仰向けだった体勢を、寝返りを打つようにして僕を抱きこむ。
「ちひろ……さむい?」
 半分寝ぼけたような、とろんとした口調で聞いてくる。
「ん、大丈夫」
と答えると、「うン……」と返事なのか寝言なのか分からない答えをして、更にぎゅっと僕を抱きしめてくれる。
「起こしちゃって、ごめんなさい」
「んー。……ぃや」
 むにゃ、というような感じで笑うから、僕はほっとする。
「……よかった」
「んー?」
 ぎゅっと三原さんに抱きつくと、抱きしめ返してくれる。広い胸と力強い腕。温もりにも、胸を通して響いてくる声にもときめいている自分に心が和らいて、同時にドキドキする。
「三原さんが、好きでよかったなーって」
 まだ、僕は三原さんが好きだ。
 そのことに安堵して、そっと呟くと、三原さんの指が、そっと僕の頬を撫でた。
「オレなんかな……」
「? うん」
 眠そうな声。唇が僕の額に押し当てられているから、ちょっとくぐもっている。眠いけど、起きてるって感じかな? 三原さんの全部が気持ちよくて、うっとりしながら返事をする。
「毎日、毎日、『オレはこいつが好きなんだー』って、思うぞ」
「え……」
 それってどういうこと?
 そう聞きたくて、顔を見上げると、三原さんは完全に寝息を立てて夢の中に埋没していた。
「……ひょっとして、寝ぼけてた?」
 ちょんちょん、と鼻をつついても、起きる気配も身じろぎすらしない。
「なんだ……」
 すごい告白を聞いた気がしたのにと、僕は少しだけ不満に思う。
(でも――そっか)
 別に、好きでい続ける必要な、ないのかも。
(毎日、また好きになっちゃえばいいんだ)
 同じに思えて、実は違うことの連続。昨日の僕と、今日の僕が僅かに違ってくるように、気持ちも刻々と変わるけれど。
 変化した気持ちで、多分僕はまた三原さんを好きになるから――だから。
 好きでい続ける必要はないんだ。
 だって、毎日、この瞬間にも、僕はまた、三原さんに恋をするのだから。


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