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2019/05/11(土) ビストロバルス
                  雪割草 1

 もう一か月ほど前から、庭の日当りのいい一角で、雪割草が可憐な花を咲かせている。
白い色、赤い色、それぞれが元気よく暖かい日の光を受けると頭をもたげ、雪など降るといかにもしょげた様に縮み上がる。この間、四つんばいになって匂いを嗅いで見たら、微かな芳香を感じた。
蝶もアブもいないのに、こんなに花を咲かせてどうするつもりなのか、見当もつかないがあるいは神の摂理というものが作用して、これでも完全に実を結ぶのかも知れない。
福寿草と共に、お正月の花の様に言われるが、自然のままでは、東京の3月に咲くらしい。
 去年の11月、私はわずかな暇を見つけ、裏日本・信州へ遊びに行った。すっかり黄色くなった落葉や松林、ヨブスマの赤い実、山で焼いて食べた小鳥の味、澄んだ空気と、それからすっかり雪をいただいたアルプス・槍連峰……
 帰って来てからも、しばらくは仕事に手がつかなかった。万事が、灰色で、汚なくて、煩話しかった。
これは山の好きな人なら、誰もが経験する気持ちだと思う。この様な気持ちでいたある日、夕方五時半頃に勤め先の会社を出ると、空はすっかり曇って、なんとも言えぬ暗い、陰湿な風が吹いている。
 ますます嫌な気持ちになってしまった。そこで、偶然一緒になった同僚のN君と、一軒の居酒屋へ入り酒を飲んだ。で、いささか元気がついて、横浜駅の方へ歩いて行くと、花屋の店頭で見つけたのが『加賀の白山雪割草、定価500円』500円と書いてあるが、単位が書いてないから、一株500円なのか、一束500円なのか分らない。
とにかく500円出すと、若い店員さんが大分たくさん分けてくれた。新聞紙で根を包み、大切にして持って帰った。
 あくる日は、麗かに晴れて風もなく、悠々と草や木を植えるには持ってこいの陽気だった。私は新聞紙を開き、更に根を結んであった麦わらを取り去って、数十本の雪割草を地面に並べた。見ると蕾に著しい大小があった。今にも咲きそうなのが5、6本ある。 そこで私はこの、今にも咲き出しそうなのを鉢に植えて、部屋の中で育てようと思った。そしたら、年内に咲くかも知れない。
 私の家は南に面して建っているので、日光さえ当たっていれば、温室のように暖かい部屋なのである。
私は去年朝顔を植えていた鉢を持ち出して、まず丁寧に外側を洗った。次にこの鉢を持って裏の畑へ行き、最も豊饒らしい土を一鉢分失敬した。
だが、いくら豊饒でも、畑の土には石や枯れ葉が混ざっている。それをいちいち取り除いて、さていざ植えるとなると、なかなか面倒くさい。               
            (続)


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