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2018/12/14(金) アイスクリーム
       行き先不明のまま

 濡れたトタン屋根の軒下には猫が一匹実にのんびりとした態度で、伸びたヒゲを撫でながら風に揺れる草をチャンと見ていた。そのそばには彼女が、ブルーの澄んだ瞳をして素足で立っている。サンダルはあそこのポストの下にひとつ。もう片方は、牛乳ビンの傍らに転がっている。
 彼女の白い足は陽の光を吸収してどんど熱を帯びて来た。そして、傘が開かれる音を待っているかのようだった。
 空は見る見る飛ばされて行って、しばらくすると大粒の雨が降りだし、部屋の中まで容赦なく入って来る。
 夕立?
 彼女は少し口を開き息を僕に投げた。しばらくすると、彼女はポケットに手を突っ込んだまま軒下に駆け込み、同じく軒下でまあるくなってゆく猫を横目でチャンと見ていた。
僕は、彼女の白い足に泥がハネ上がる瞬間が嬉しくて、口の中で舌が動くのを感じ、そのまま唇を舐めた。それは花よりも美しい、と思ったのも束の間、さっき彼女から僕に投げられた言葉が耳元で再生される。
「これから先はどうなるかわからない。」

 こないだの夜、真夜中まで雨が続いた日、2時頃に空がピカリと光ったと思ったら、それが雨の上がる合図だっだんだ。僕はその時、片手で頭を抱え込んでいたんだ。そしてその瞬間に思ったんだ。次いつ雨が降るかわかんないけど、その時のためにしっかりと出来のいい傘を1本買っておこうと。
 或る朝ベッドの上で足を伸ばして休んでいると、どこからか話し声が聞こえた。それは僕のひざ小僧からだった。耳を近づけてみると、彼女と猫の声だった。僕はピクリともせずに、興味をもって聞いていた。
 「ねえ猫チャン、あたしと一緒にペルーの山で骨を折っていくつも制覇してみない?」
 「ニャンノット・それより子供達のあとを追っかけて火をつけて回ろうよ。」
 「それじゃあ競争よ、負けるわけにはいかないわ。」
 
 僕は急に、セロニアス・モンクはキッチンにピアノを置いていたのを思い出した。
僕もモンクのように、これからはキッチンに紙を広げて絵を描こうと思った。それにポリバケツと青い水。
 別に意気込むわけじゃないけど、
 彼女と猫と並んで生きたい
 という気持ち。
                           (了)


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