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2019/01/30(水) のぼり・水素風呂
    あの丘 1
 昭和初めのある日のある村
 丘の中腹に、古くから代々続いている農家がありました。古くからあるというだけで、家は貧しくて、手伝いを雇う余裕もないので、まだ10才にしかならない小さな男の子が、両親と一緒に農作業をしていました。男の子は、学校から帰ると、毎日のように田畑へ出たり、穀物小屋の中で仕事をしたりして、一日中休みなく働きました。そして、夕方になるとやっと一時間だけ、自由に遊ぶ時間をもらっていました。 
その時には、男の子は、いつも決まって、もう一つ後ろにある小高い丘を目指して出かけて行きました。その丘へ上ると、何百メートルか向うの丘の上に、金さんの家の窓がわずかに見えました。男の子は、毎日、そのきれいな窓を見に行きました。
窓はいつも、きらきらと眩しいほど光っています。そのうちに家の人が雨戸を閉めると見えて、急に、いきなり光が消えてなくなります。そしてもう、他の家と違わなくなってしまいます。男の子は、日暮れになったから金さん家も雨戸を閉めるのだなと思って、それを潮時に自分も家へ帰って、ごはんと少しのおかずを食べて寝るのでした。
 ある日お父さんは、男の子を呼んで、「おまえはほんとによく働いてくれているから、そのごほうびに、今日は一日休みをあげるから、どこへでも行って遊んでおいで。ただ、このお休みは、神様が下さったのだという事を忘れてはいけないよ。のらくらとして無駄にしてしまわないで、何かいい事をして来なければ駄目だよ。」と言いました。 
男の子は喜びました。それでは、今日こそは、あの金さんの家へ行ってきれいな窓を確かめて見ようと思って、お母さんから、おにぎりを二つ作ってもらって、それをふところに押しこんで出かけて行きました。
男の子には楽しい遠足になりました。裸足のまま歩いていくと、往来の白い埃の上に足跡がつきました。後ろを振りかえって見ると、自分の小さな足跡が長く続いています。足跡は、何処までも自分について来るように見えました。それから、自分の影法師も、自分の行動する通りに、一緒に踊り上ったり、走ったりして、ついて来ました。
男の子にはそれがまるで、子分を従えているみたいで、愉快でたまりませんでした。 そのうちに、だんだんにおなかがすいて来ました。
 男の子は道端の生垣の前を流れている小川のフチに座って、お母さんに作ってもらったおにぎりを食べました。そして、透き通ったきれいな水を掌ですくって飲みました。それから、食べ残ったごはんの粒は、辺りへ振り撒いておきました。そうしておけば、小鳥が来て食べます。これはいつか、お母さんから教わったことでした。 
男の子は再びどんどん歩き出しました。そして、漸く、小高い、まっ青な、いつも遠くから見ている丘の下へ着きました。男の子はその丘を一目散で上って行くと、例の金さんの家がありました。しかしそばへ来て見ると、その金さんの家の窓はただのガラス窓で、特別な装飾などはどこにもされていませんでした。男の子はすっかり当てがはずれたので、泣き出したいくらいにガッカリしてしまいました。
               (続)


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