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2019/01/31(木) くまじ・着物大好き
      あの丘 2

 すると、その家から金さんの家のお母さんらしい人が出て来ました。そして何かご用ですかと、優しく聞いてくれました。男の子は、「僕は、うちの後の丘の上から見える、このお家の光っている窓がどんなもので出来ているのかを見に来たのです。でも、窓は普通で、ただガラスがはまっているだけですね。」と言いました。おばさんは、首を振って、「私の家は貧乏な百姓ですもの。装飾などが窓についている筈はありません。何よりもガラスの方が明るくていいんですよ。」こう言って笑いながら、男の子を戸口の石段に腰をかけさせて、牛乳をコップ一杯と、パンを一個持って来てくれました。おばさんは、それから、家の中にいる、男の子とちょうどおない年ぐらいの金さんの娘らしい女の子を呼び出しました。そして、二人でお遊びなさいと言って、ニッコリうなずいて見せて、再び家へ入って仕事を始めました。その小さな女の子も、自分と同じように裸足のままで、黒っ茶けた木綿の上着を着ていました。しかし、その髪の毛は、丁度、男の子がいつも見ている光った窓のように、きれいな金色をしていました。それから目は、真昼の空のように真っ青に澄んでいました。
 女の子は、にこにこしながら男の子を誘って、手を取って家の裏に連れて行き、つないでいる牛を見せてくれました。それは、額に白い星のある、黒っぽい小牛でした。男の子は自分の家の、白い、栗の皮のような色の牛のことを話しました。女の子は、そこいらになっている果物を一つもいで来て、二人で分けて食べました。二人はすっかり仲良しになりました。 男の子は、きれいに光るこの家の窓の事を女の子に話しました。女の子は、「ええ、私も毎日見ているわ。でも、それは、あっちの方にあるのよ。あなたはあべこべの方へ来たんだわ。」と指差して言いました。「いらっしゃい。こっちへ来ると見えますよ。」と、女の子は家のそばの、少し高い所へ男の子を連れて行きました。そして、家の光る窓は見える時が決まっているのだと言いました。男の子は、ああ決まっている、お日さまが入る時に見えるのだと答えました。 二人は小高い丘へ上りました。女の子は、「ああ、今ちょうど見えているわ。ほら、ごらんなさい。」と言いながら、向うの丘の方を指差しました。「ああ、あんな所にもある。」と男の子はびっくりして見入りました。しかし、よく見ると、それは丘の中腹にある、自分の家でした。男の子はびっくりして、僕はもう家へ帰ると言い出しました。そして、もう一年も大切に腰に下げた袋にしまっていた、赤い筋が一すじ入った、白い、きれいな小さな石を、女の子にあげる事にしました。それから、ビロードのようなつやのある、赤いのと、ぽちぽちのついたのと、牛乳のような白い色をしたのと、三つあげました。そして、また今度来るからといって、大急ぎで走って帰りました。女の子は、男の子が慌てて駆けて帰るのを、びっくりして見送っていました。キラキラした夕日の中に、いつまでも立って見送っていました。
 男の子は、息も休めないで、どんどん走って帰りました。しかし道がずいぶん遠いので家へ着いた時には、もうすっかり辺りは暗くなっていました。
自分の家の窓からは、ランプのあかりと、囲炉裏の焚き火とが、黄色くも赤くも見えていました。丁度、さっき丘の上から見た時と同じように、きれいに輝いていました。男の子は、戸を開けて家に入りました。お母さんは立って来て、頬ずりをして迎えました。小さな妹も、よちよちよろけながら来ました。
 お父さんは囲炉裏のそばに座ったまま、ニコニコしていました。お母さんは、「どこまで行って来たの? 面白かった?」と聞きました。「うん、ずいぶん愉快でしたよ。」と男の子は、嬉しそうに言いました。「何かいい事を覚えて来たかい?」とお父さんが聞きました。「僕は、今日、自分たちのこの家にも、どの家にもキラキラしたきれいな窓が付いているという事を習って来ました。」と、男の子は答えました。
                       (了)


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