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2008/11/15(土)
感想にかえて
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頭に中でぐるぐるしてるものを取りあえず形にしました。ネタバレを含んでおりますので御注意下さい。
髭
「あーかなり伸びたなー」 鏡の中ではもうすっかり生えそろった髭に苦笑する男が1人。 「でもオレ結構良いじゃん。渋い大人の男って感じだよなー」 そう言ってニヤリと笑った顔にふとあのスクェアグラスが重なる。 『髭は大人の男の証だぜ。尻の青い若造にゃ判らんだろうがな』 おっさん呼ばわりする男を軽くいなして笑う顔は確かに強かな男の表情。 その時は年寄りの負け惜しみと減らず口を叩いたが内心は少しうらやましかった。いつか俺もあんな顔して笑ってやると口には出さないがそう決めたものだ。
今鏡の中にはあの時の男と同じ笑み。 絶望する事を止めてあの人の力になれるように必死で考え動く日々。それがこの顔を造ったのなら 「・・少しは俺も成長したって事スかね?中佐殿」 問いかければ 「甘いな、お前さんなんぞまだまだだよ、若造」 鏡の奥でオリーブグリーンの瞳が笑った。
電話
本当は電話が恐かった。もうずっと。耳の奥に染みるあの沈黙が忘れられなくて、ベルの不意打ちに脅えた動物のようにびくんとするのがいつまでたってもなくならなかった。
だけど 「かしこまっちゃってまあ」 聞き覚えのある少し掠れた低い声 「いつもの口調でいきましょうや 大佐」 あの馴染みの香りすら瞬時に思い出せる。疲れた身体も足の痛みも全てが何処かに吹き飛んだ。 遠く2人を隔てる距離すらその時消滅した。今あの男は確かに自分の傍らにいる。そう感じた。 だから 「出世払いだ ツケとけ!」 もう電話は恐くない。
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