日々是不穏
ホームページ最新月全表示|携帯へURLを送る(i-modevodafoneEZweb

2008年12月
前の月 次の月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
最新の絵日記ダイジェスト
2016/07/24 猫あつめパロ23
2016/06/20 近況報告
2016/05/29 残念ながら
2016/05/09 ねこあつめパロ22
2016/05/01 ことわざみたい

直接移動: 20167 6 5 4 3 2 1 月  201512 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  201412 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  201312 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  201212 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  201112 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  201012 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200912 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200812 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月 

2008/12/07(日) 南の国から
無事帰りました。強行軍で遺跡巡りをして来ましたがさすが日本人が行きたい世界遺産のトップにランクインされるところだけあって見ごたえは十分。アルカイックスマイルも美しい女神のレリーフを堪能いたしました。
で帰ったらいきなり体調を崩す。やっぱり無理がきかない年になったのねー。でも生水は飲まないようにしてたのに。おかげで帰国してからうどんとお粥しか食べてません。

旅行中はオタク話ができる訳じゃないので妄想が貯まります。でこんなん書きました。ネタバレSSその3。

「昼下がりの客─例えばこんな未来」

カランと入り口のベルが鳴る。
いらっしゃいと店主は読んでいる新聞から顔も上げずに言った。長閑な昼下がり、小さな村のたった一件しか無い
雑貨屋に来る客の殆どは顔見知りだったから。
「葉書と切手をもらえるかな。それから何か甘いものを」
そういう点ではこの客も同じかも知れない。金髪、碧眼、おまけに髭面の店主は確かに彼の顔を知っていた。
「・・・ロイ」
そうとても良く。
ぽろりと口の端から火のついた煙草が落ちる。無意識にそれを掴んだ男はブリキの灰皿に放りこむと
「葉書と切手・・ですね。ちょっと待って下さい」
掠れそうな声を必死に宥めてキイッと車椅子ごと後ろを向いた。その手が震えそうになるのをなけなしのプライドが抑える。
「甘いもの・・あのジンジャークッキーなんかどうスか。隣の村の奥さん方の手作りですよ」
背後には商品が並んだ棚が天上近くまでそびえている。件のクッキー缶は真ん中あたりにあった。当然立ち上がらなければとる事はできない。
いやそのテーブルのチョコバーで良い。そう客が言おうとする前に店主は傍らの長い棒を手に取る。それでひょいとブリキの缶を軽く突けば当然それはぐらりと揺れて下に落下し─下で待ち構えていた男の広い手に見事にキャッチされた。
「はいクッキー。他には」
ニッと得意げな笑顔が浮かぶ。その馴れた様子に客は感心したのか
「じゃああのチョコの箱とブルーベリーのジャム。それにパンケーキの素と紅茶の包み」
あちこちの棚にある品物を次々と指差す。ひょいひょいとその注文を難無くこなし年代物の樫のカウンターに積み上げられた品物の山に満足げに頷いた客は最後の注文を言った。
「それから金色の大型犬を1匹」
ぴたり。レジを打つ男の手がそこで止まる。
「・・うちはペットショップじゃありません」
「カウンターの向こうにある物は皆売り物じゃないのかね?ハボック」
「動けない犬に商品価値はないでしょう。大体俺に何をやらせようっていうんです!」
そこで始めて2人の目があった。その瞬間時間はあの日の病室に戻る。
「俺には田舎の雑貨屋が精一杯だ!」
「ジャン・ハボック元少尉!」
「YES.SIR!」
懐かしい一喝に条件反射で背筋を伸ばした男に客は一枚の書類を渡す。それを読んだハボックは言葉を無くした。
「大総統ロイ・マスタングの名においてアメストリス国軍兵站部所属大尉として軍への復帰を請う。・・・ってロイ」
「お前がいなければ私達は戦ってこれなかった。正規の補給が得られない我々を支えたのはお前の力だ。その腕をぜひ役立てて欲しい」
つい半年程前まではこの国は内乱状態にあった。国を支配する軍部に対して立ち上がったのは一部の将校とその部下。
当初すぐ鎮圧できると誰もが思ったそれがしぶとく戦い抜き遂に勝利した時誰もがそれを奇蹟と思ったけれど
「独自のルートで品物を集め、その発送を手配したのは誰だ?お前じゃないか」
「だけどそれは親爺の伝手とかそういうのを使っただけで、第一資金はあんたの私財じゃないか」
「金があっても上手く使う人間がいなければ話にならない。あの限られた資金だけでよくやったと皆も感心していたよ。今の軍部はまだ態勢が整ってない。現場に長けた人材は貴重だ」
「けど、俺はあんたに追いついた訳じゃない」
それが2人の約束だったはず。
でも今だ動かない足に目をそらせた男の頬を白い手が包む。いつの間にか客は勝手にカウンターの中に入っていて
「いいや、お前は追いついた」
懐かしい輝きを宿した瞳がハボックをうつす。
「その身体で立派に私の役に立つ事を証明してみせた。今度は私がそれに報いる番だよ。セントラルにはもちろん仕事もあるが、
まず先に足の治療だ。最新の治療法と術師が待っている」
驚きで何も言えない男をロイは抱き締めた。不自由な身になっても鍛練は欠かさなかったのか肩や腕のラインは昔とそれ程変らない。
「だから・・帰って来い。ハボック」
私の元へ。
返事はすぐに返らない。だけど震える腕がぎゅっとその身体を抱き締めてそして
「YES.・・YES.SIR」
懐かしい声が確かにロイの耳に届く。


ハボのああいう形での復帰だと足はもうあのままじゃないか。という話をあちこちのサイトで見ます。それは私も思ったけれどそれならこういう未来もあっていいのではと。いやあくまで完全復帰を望む気持ちは変らないけど(も一度ジャクリーンの勇姿は見たい!)どんな形でもあの2人なら乗り越えるんじゃないかと思いたい。

拍手御礼
11月27日11時54分にメッセージを下さった方
メッセージとポチありがとうございます。あのインタビュー、ロイは真面目に答えた気でいますが読んだ人はどう思ったでしょうね。ハボはきっと「俺は犬じゃない」とか言って拗ねてでも秘かにへへって照れると思います。でロイはその姿に尻尾を見るに違いない。いずれハボバージョンのインタビューも書きたいです。


 Copyright ©2003 FC2 Inc. All Rights Reserved.