日々是不穏
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2010/02/23(火) 22222
ちょーっと間に合いませんでしたがこんだけ並ぶの何かの縁。猫SSアップ

黒いキューピッド

それは日差しも緩むある昼下がりの事。お気に入りの昼寝スポットに向かうロイはふと足を止めた。奥のベンチから聞こえてくるのは甘えた鳴き声と
「わーった、今やるからがっつくんじゃねーの」
金髪垂れ目の部下ののんきな声。
何事かと覗き込めばハボックの膝にころんと丸く寝そべっているのは黒い三角の耳と長い尻尾を持つしなやかな獣ー1 匹の黒猫だ。野良なのか首輪のたぐいは見当たらないが人の膝を独占しあまつさえ昼食のサンドイッチを要求してくるあたり中々の貫禄だろう。
「はい、はいハムとチキンはあげるから。レタスとパンは俺に譲ってくれよ、これ評判のデリのやつなんだから」
「にゃー」
昼食を良いように略奪されているのにハボックの目はいつもよりずっと垂れ気味だ。合間にそっと喉を撫でようとしてパシッと振り払われもニコニコしている。
・・あいつあんなに猫好きだったっけ。
それを見つめるロイの額に知らず知らず縦皺が寄る。
大体あいつ犬派だろうが。ブラックハヤテにあんなに懐かれてるのに、浮気者。
「そっちのオイルサーディンもよこせ?だめだよ、こいつは塩気が強いんだ」
「にゃっ!」
「しょーがないなあ、じゃちょっとだけだぞ」
「猫には随分と甘いものだな、ハボック」
そのにやけた顔が何故かカチンときた。知らずに足を踏み出したロイの声は少し固い。
「あ、居たんスか、大佐ー。いやこいつ野良でね。時々ここいらで餌やってるんですよ」
ハボックの方はもちろんそんなロイの表情に気が付かない。が膝に乗った方はキラリと金の瞳を不粋な闖入者に向けた。
「ふうん、野良にしては毛並みが良いな」
「でしょ、結構可愛い奴なんですよー、大佐も撫でてみます?」
1人と1匹の間に走った電流のような気配に鈍い犬はもちろん気が付かない。チラリとロイを一瞥した黒猫はそれきり関心を失ったようにハボックの膝にぺたりと寝そべる。
「・・ふん。私は犬派んだがな」
小さな黒い頭に無防備な手が伸びた─その瞬間
「いっつ!」
「大佐!」
細いが鋭い爪が一閃。無礼を咎めるように一声鋭く鳴いた黒猫は黒い風のように茂みの奥へ逃げ込み、ロイの掌にはサインのように赤いラインが一筋残る。小さな赤い玉がラインに沿って滲みでた。
「大丈夫スか、大佐!」
「いや、平気だ。ハボック。猫とはいえ勝手に野生の獣に手を出した方が悪い」
赤いラインを押えてロイは猫の消えた茂みを見つめる。
きっとあの猫は自分の嫉妬に反応したのだ。だから攻撃してきた。
手に残された紅い線はそのままロイの気持ちを現わしているようで思わず目を逸らした時
「すいません!ちょっと、失礼しますよ!」
生暖かい感触がそのラインをおおう。
「おい、ハボック!」
咄嗟に引いた手はしかしがっしりとした腕に掴まれて動くこともできない。
「猫の爪って放っとくとヤバい場合があるんですよ!すぐ医務室行きますが、取りあえず応急処置です。気持ち悪いだろうけど我慢して下さい」
「ハボ・・」
手当てに夢中になっていた男は気付かない。腕を取られたロイの頬がみるみる内に紅く染まっていった事に。

翌日ベンチの茂みの影に高級猫缶が1個、蓋を開けておいてあった。やって来た黒猫は当然の権利とばかりに全部綺麗に平らげて満足そうに髭を舐めた。

片思いSS。きっとロイは自分に三角耳があれば・・とか思って落ち込むと良い。


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