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2010/06/12(土)
ありがとうございます
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ええと感想言える程まだ整理できません。でもともかくこれだけは言っとく。 牛先生、ご苦労さまでしたぁぁぁぁぁー。そうしてありがとうございます!!最後の最後にあのシーンを見て号泣しました!! アレを見てすごい勢いで色んなシーンが頭を駆け巡ったのでともかくアウトプットしときます。思い切りネタばれしてますので本誌未読の方はお気をつけ下さい。勢いまかせの代物ですが後でちゃんとまとめたいです。
ありがとう
後にセントラル動乱と呼ばれたあの戦いから約1年後。とある村の雑貨屋を黒髪の男が訪ねた。 「元気そうじゃないか、この駄犬」 店の主人を犬呼ばわりした男は着古したツィードのコートに洗いざらしのジャケットという質素な出で立ちだが 「あんたも元気そうですね、マスタング大将閣下。お祝いのワインはちゃんと届きましたか」 実質的にはこの国を統べる立場にいる。 「ああ、皆と一緒に乾杯をした。・・お前も来ると思っていたのに」 「いや、行こうかと思ったんスけどね。皆に気ぃ使わせちゃ悪いと思って」 垂れた青い瞳に映るのは動かない両足。とうにふっきったはずなのにいざとなったらこの姿を昔の仲間晒すのが怖くなったとは言えなかった。だがそんな逡巡など付き合いの長い男にはお見通しなのだろう。 元気を出せとばかりに金の髪がぐしゃぐしゃとかき回されて 「情けない顔の犬なんか私は好かん。だから私がここに来たんじゃないか」 「え・・?」 「私はお前の足を治しに来たんだよ、ハボック」 思っても見なかった台詞に青い瞳が見開かれた。
「ちょっと待って下さい!」 どこか邪魔が入らない広い場所はないかと言われハボックは使っていない納屋にロイを案内した。むき出土の上に横になれと言われともかく従ったハボックはその周囲を囲むように錬成陣を書き始めたロイにを変えて叫ぶ。 「俺の足、神経が途切れているんですよ!普通の錬金術じゃ治らないって医者にも言われた。あの賢者の石ないと無理じゃないですか!大佐は持ってないでしょう!」 「大将だと言ってるだろうがこの駄犬。安心しろ、腕も足も無くならない。私の差し出すものは持大して役に立たないものさ」 「・・まさかあんたの真理の扉って奴を等価に差し出すつもりなんですか?でもそれって錬金術が使えなくなるんでしょう?」 「ほぅ、良く知ってるな、ハボ」 「アルフォンスに聞いたんスよ。あの子がどうやってこちらに戻ってきたか」 体を取り戻した少年は世話になった人々にあいさつに回っていた。そうして律儀にこの垂れ目の少尉もやってきたのだ。 「ゆっくりしてもいられないってのを俺が無理に引き止めて全部聞きました。俺がリタイアした後どれほどつらい目にあっても戦い続けたことも。そうして最後にアルは言いました。もう僕錬金術は使えないんだと」 兄さんが扉を開けて僕を連れ戻しに来た。だから帰りの扉は僕が開けなくちゃ。 多分不可能はないだろうその力を手放す事に兄弟達はすこしもためらわなかった。晴れやかなその笑顔よかったなとハボックは心からそう言ったけど 「俺のためにあんたが錬金術を手放す事なんかない。あんたはこの国を背負っていく人間で力はいくらでも必要だ」 絶大な威力を誇る焔の術。それを手放すのかとハボックは叫ぶがロイは穏やかに笑う。 「お前のためじゃない。私のためだ。私がお前に傍に居て欲しいからその足を治すんだ」 「ロイ・・」 すっと横たわったハボックの傍にひざまずいてロイはその頬を愛おしげに撫でる。 「戦いの中でもお前を忘れた事はない。こうして時々会えるだけで満足すべきだと自分に言い聞かせはしたのだがな」 未だ政局は不安定でテロの対象になりやすい自分の傍に大事な人を置く。その危険性にロイは何度も諦めようとしたのだが 「結局思い切れなかった。どうしても私はお前に傍に居て欲しい。だからこれは私の欲望でお前が気にする事はないんだよ」 「ちょ、ロイ!」 立ち上がった男は静かに両の手を合わせる。祈りの姿にも似たそれにハボックが手を伸ばしたところで 「焔の錬金術師、最後の錬成だ。お前のために使えて良かったよ」 晴れやかにロイは笑い─そうして2人を光が包む。
「たかが神経繊維数ミリのために扉を差し出すなんて物好きだな、錬金術師」 「犬は主人の傍にいるべきものだろう。私の真理はそれだ」 「長年仕えた火蜥蜴より犬を選ぶか。全くお前達は面白い。さぁ望みのものを得るが良い」 薄く焔がロイを包む。やがてそれは体から離れ中空に浮かぶ巨大な火蜥蜴の姿となり扉の向こうに消え去って 「さようなら、そうして・・ありがとう」 主の言葉に送られながら扉は静かに崩壊していった。
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