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2010/09/26(日)
秋来たり
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一気に涼しくなりましたねー。全くどんだけ暑かったのか、体で判ります。読書に妄想(笑)に最適の季節到来です。季節SS書きましたー。月がきれいだから恋愛話でも・・と思って玉砕です。珍しくワンコものではないのですがどうぞ。拍手のお返事とかは明日しまーす。
月のえん罪
「あのお月さんみたいにいい加減な奴だーって言われたんスよ」 銃胼胝のある太い指が指す先には金色の円盤。1年で今が一番美しいと東の国では褒め讃えるらしいが天空に輝くそれは確かに美しかった。 「月が姿を変えるみたいに心を変えるって彼女言うんですけど俺ちょっとよそ見しただけっすよ?」 なのに酔って嘆く男にはその美しさに気付く余裕もないらしい。酔い覚ましにと寄った深夜の公園のベンチで男はひたすら我が身の不幸を嘆くばかりで相談役と言うか愚痴相手になってしまった私はそっとため息をつく。 いつもは飄々とした金髪垂れ目の部下が最近どうも元気がない。部下とのコミュケーションをはかるのも管理職の勤めだから丁度仕事の切れ目ができた今日強引に飲みに連れ出してみればこの始末。 最初は中々口を割らなかった男も酒の力にはどうしようもなく、ほどなく真相は知れたのだが。 「そりゃー最近仕事忙しくてほっぽといた俺も悪い。でもね久方ぶりのデートで他の女の子と話してるの目撃されたからって浮気者はないでしょ!」 金髪青い目長身でスタイルは良い。派手さはないがそれなりに整った顔立ちで若年ながら階級は少尉とそこそこ好条件が揃った男はわり切れ間なく彼女ができるがいかんせん長続きがしないらしい。本人は真面目につきあってるつもりでも不規則な生活にたまにちょっかいをかける女性も多いからつきあう方も不安になる事もあるのだろう。今回のはまさにそのケース。 「ねぇ聞いてます?大佐ぁ」 「ああ聞いてるよ、少尉。まったく確かに濡れ衣だな」 「そーでしょ〜」 「ええい、うっとおしい!」 涙目でかばっと抱きついてくる男を無慈悲に押し返してロイはパシリと金の頭をはたいた。 「誤解するな、私が濡れ衣だと言ったのはあの月の事だよ、ハボック」 「はい?」 「大体月が実際に形を変える訳じゃないだろう?例え半月でも三日月でも望遠鏡で見れば判るが月はいつもまん丸だ、変わって見えるのは光のせいだ」 「はぁ、確かにそりゃそーですけど」 「つまり形が変わって見えるのは見る方に問題があるのさ。光の加減と同じくお前の気持ちが動くか彼女の気持ちが変化するからこういう結果になる・・不実の象徴みたいに使われるのは月にとってとんだえん罪と言う訳だ」 「それってつまり俺が悪いって事じゃ・・」 「そうだな確かにお前が悪い。彼女の不安に気がつかないのも、ほいほいよそ見をするのもみーんなお前が悪い」 ヒデェと喚く金の頭をもう1つはたいてロイは冴え冴えとした月を見上げ心の中で呟いた。 全くお前はしょうもない男だよ、ハボック。こんな事で私に泣きつくんだから。
─私の気持ちはずっと変わっていないというのに。
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