日々是不穏
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2013/01/28(月) ちょっとSS
ロイがCSIの捜査官、ハボック警官の現代パロシリーズです。

CSI:EAST IN N.Y 1

「ほぇ〜」
「いつまでその大口を開けているんだ、この馬鹿犬」
目の前にそびえるのは巨大な街頭ビジョン。多分世界で一番有名な風景にぽっかり口を開けたままの金髪をぺしっと叩いたのは黒髪の青年。
「大体お前この間の事件で一度来ただろうが、ここには」
「けどあん時はすぐ向こうの警察に行ったから周り見る余裕なんてなかったっスよ。あん時も思ったけど本当になんでこんなに人が居るんですかね?お祭りですか?」
「それはここがタイムズスクェアだからだ、この田舎もの!」
時刻は夜の7時ぐらいだろうか。ネオンは煌めきミュージカルへと向う人々や観光客、それに声をかけるチケット売りにクッキーモンスターの着ぐるみ。まるでカーニバルのようなそれが日常風景とは穏やかな地方都市からでできたお上りさんにはどうにも理解できないらしい。
「・・明日1日は私は会議で出ずっぱりだがお前1人にしとくのが何とも不安だよ、ハボ」
司法人類学会の定例会議がこの国1番の都市で行われると聞いた時ハボックに一緒に行くかと聞いたのはロイにしてみれば破格の勇気がいった。けれどいつも忠犬よろしくかいがいしく世話をして愛情を与えてくれる恋人に自分だって何かを返したいという思いはずっと心の奥底に蟠っていて─だからハボックが休暇をどうしようと何の気無しに言った時ロイはつとめてさりげなーく言ったのだ。
「ああそういば今度N.Yに行く用事があったな・・丁度いい、一緒に行くか?ジャン」
「え?一緒に旅行?!本当スか、ロイ!」
それを聞いた恋人の姿は大事なご主人様に巡り会えた犬そのもの。ロイにだけ見える尻尾をもう千切れんばかりにに振って喜ぶハボックに思い切り抱きしめられてロイは半分仕事である事を言えなかったくらいだ。最もそれを聞いてもハボックのテンションは全く下がる事はなかったのだが。

「明日のディナーの予約はステーキが評判のレストランに入れてある。時間は7時で場所はここ・・判るか?迷子になったらすぐに連絡しろよ?」
「もー子供じゃないんスから。俺だって1人でだいじょーぶです!てきとーにあちこち見て回りますから。俺、今までどんな所に行っても迷子にはなった事ないんですよ。さ、今日は早くチェックインして休みましょえーとこっちですねホテルは」
ロイのスーツケースの取っ手を掴むとハボックは迷い無く巨大なスクリーンの方に向って歩き始める。
「おい、ハボ・・」
「N.Yって言ったって外国じゃないんだ、イーストシティをちょっと大きくしただけじゃないスか」
「それはそうだがな」
「会議は2日で終わりっしょ?その後は自由なんだから俺がロイを案内してあげますよ。行きたい所考えておいてくださいね」
「それはありがたいんだがな、ジャン!」
声と共にぎゅっと取っ手を掴んだ手が握りしめられる。人前で滅多に愛情表現してくれない恋人の突然の行動にへらりと青い目が垂れた。
「どうしたんスか?ロイ。あ、歩くの早すぎて不安になっちゃいました?大丈夫っすよー俺、絶対ロイを迷子になんかしませんから。なんなら手をつないで行きましょうか」
もう満面に笑みを浮かべて差し出された手はしかし宙に浮いて返ったのは真冬の冷気より冷たい声。
「悪いが、地図によると予約しているホテルは反対方向なんだがね、ハボ」


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