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2013/11/17(日)
SS冬将軍再来
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冬将軍再来
空気がキンっと緊張するのは暦通りにやってきた冬のせいでは決して無い。 「敬礼ー!オリヴィエ・ミラ・アームストロング少将、到着!」 冬の先触れとばかりに金髪の女帝のブリッグスからやってきたからだ。 恒例の東と北の大規模合同演習の打ち合わせでやってきた彼女の武勇もとい名声は東方司令部の隅々にまで渡っておりその雷鳴と称される怒声を浴びないようにとどの兵士も背筋を伸ばし足早に歩く。どちらと言うと平時はのんびりムードが漂う司令部はここ数日のうちにまるで別人のように変わっていて上層部ー取り分け威厳の足りない某司令官を苦笑いさせた。 「私が居る時とまるで違うじゃないか」 「そうですね。廊下は静かだし掃除も行き届いている。軍服の乱れも見当たらないし言う事なしですわ」 誰かさんが上に居る時と違って 「・・フン」 声にならない呟きも当事者の耳は拾ってしまう。すっかり拗ねたご主人様をなだめるのは忠犬の役目だ。 「まー大佐には大佐のやり方ってものがありますから。それにうちの連中がこうやってられるのも1週間が限度っすよ」 「それ程彼女の怒声が恐いのかね?」 「怒声というよりあの目がね。噂じゃひと睨みでブリッグスの熊も凍り付いたそうっスから」 有名人ほど逸話に尾ひれがつく。彼の上司だって同じくらいとんでもない逸話が山のようにあるのだがそれを言わないだけの知恵は金髪の少尉にもあった。 「でもここ数日の少将閣下は割とおとな・・もとい穏やかですね。さっきの会議でも書類の不備に何も言わないで再提出を要求しただけですわ」 「そーいや演習でもあんまり厳しい顔してなかったような」 「・・・ふむ。さしもの氷の女帝も年月が経てば少しは丸くなる・・」 あの女帝が年相応に落ち着く?ブリッグスの雪が全て溶けてもそれはないだろうとロイはその考えを打ち消したが
「ほーら取って来い」 わん!! もし彼らが裏庭を見たら確実に自分の目を疑うだろう。そこには金色の大型犬とボール遊びに興じる女帝の 姿があった。 「よーし、よし、利口な子だ」 くー。 銜えてきたボールを足下に下ろせばぐしゃぐしゃと金の毛並みがかき回される。ふっくらとした唇には滅多にない笑顔が表れて長年仕えて来た側近も思わずサングラスの角度を直した程だ。
「・・・まったくマスタングの奴は犬の趣味だけは良い」 わぅ?
ブリッグスの女帝オリビエ・ミラ・アームストロング少将が実は結構可愛い物好きである事をー知ってる者はあまりいない。
前に書いたSSネタ。その2。ワンコとオリヴィエ様。以外とあの少将閣下は犬好きのような気がします。
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