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2013/05/20(月)
CSI:NY 5
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「ほらこいつでしょう?」 ハボックが案内した所はスケートリンクの近くの小径だ。岩の上に足を踏ん張ってその犬は居た。 「DEDICATED TO THE INDOMITABLE SPRIT OF・・かそうか、犬ぞりの犬なんだな」 「1925年にアラスカでジフテリアが流行したんですが悪天候で僻地の街に血清を運ぶ事ができなかった。で犬ぞりを使っておよそ1000キロ以上の道のりを犬ぞりのリレーで運んだ。それを讃えてできた像らしいっすよ。こいつはバルト、アンカーを受け持ったチームのリーダー犬だったんだって」 「・・詳しいなお前、というか良くここ見つけたな」 いい加減極まりないメールを送りつけた事を棚上げしてロイは尊敬の眼差しを浮かべる。実際銅像は無造作というか自然に岩の上に置かれていて下に由来を記したプレートがあるだけで目立つ看板も無い。アリスの像ほど有名じゃないからガイドブックにも載ってなくてだからこそロイもいらない苦労をしたのに。 「ああ、ダリオが詳しく教えてくれましたから」 「?誰だ、ダリオって」 おのぼりさんのハボックにこの地に知り合いがいるなんてロイは聞いてない。誰だと自然に険しくなる目つきにも気付かずハボックは種明かしを続ける。 「公園のホットドッグ売りっすよ。いやここのホットドッグ売りって皆同じ品揃えでね。試しに1個買って見たけどなんつーか平凡な味でさ。正直に感想言ったら喧嘩売られたけど俺がソーセージの焼き加減アドバイスしたら真面目になっちゃって。聞けば最近始めたばっかでまだ上手く売れないんだって」 イーストシティで警官になる前のハボックは公園でサンドイッチ屋をやっていたのだ。ベーグルにスープ揚げたてドーナッツとカフェ並みの美味しさとリーズナブルな価格でかなり繁盛していた。その経験から不慣れなホットドッグ屋を見過ごす事はできなかったのだろう。結局その日の午後ずっと焼き方から特製ケチャップの作り方まで熱心に指導するはめになってしまったらしい。 「色々面白い話も聞けたし穴場の観光スポットも教えて貰った。それに公園の中あちこち移動してたから大体感覚も掴めてね。ロイの来る方向も予測ついたんすよ」 へらりと笑う顔はもうテリトリーを把握した犬の顔だ。どこでもすぐに自然体で溶け込めるそのおおらかさはロイが決して真似できないもの。 「・・いい1日を過ごせたようだな、ジャン」 私が居なくてもと一抹の寂しさを紛らわすようにぐりぐりと金の頭を撫でればふわっと煙草の薫りが強くなった。 「ハボ」 「あんたが居なきゃつまんないよ、ロイ」 ぺろんと鼻の頭を舐めて寂しがりやの大型犬は鼻を鳴らす。 「映画に出てたビルに昇るのも松明持った女神見に行くのもあんたが一緒じゃなきゃ楽しさも半分です」 青い瞳にひたりと見つめられてロイは観念した。ここは何でもありのビッグアップル、男同士のラブシーンなんて珍しくもなんともない─はずだから 「この馬鹿犬、それはこっちのセリフだよ」 ぐいっと金の頭を引っ張ってロイはタバコ臭い唇を思い切り塞いだ。
目の前の光景に勇敢な犬の銅像がどう思ったかは誰も知らない。
「あ、予約取れなかったあの話題のアメコミのミュージカルのチケットね、ダリオが手配してくれたんスよ。明日の晩行きましょーね、ロイ」 「・・お前この値段絶対ぼられてる」
妙に長くなりましたがお付き合いありがとうございましたー。犬の銅像は私も偶然見つけたものです。有名な話らしくディズニーで映画化されたとか。真冬のセントラルパークは色が無くて今度は緑の季節にいきたいです。しかしCSI:NYでは一体何度この公園で死体が発見された事か・・
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