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2014/10/09(木)
メモ
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「それで何故次は服屋なぞに寄らねばならぬのだ」 リムジンの行き先を聞かされて心底嫌そうな顔をするオリヴィエにロイはにっこりと笑う。 「花嫁に必要なのはドレスに決まっているでしょう?」 「下らん。どうせ式は軍の礼装で済ますのだ。おい運転手さっさと司令部に車を戻せ」 「何を言うんですか、アームストロング家の当主結婚ですよ?軍の礼装なんかで済ませたら家名に傷が付くと一族の方達が納得しませんよ、オリヴィエ」 「・・貴様」 一番の弱点を持ち出されて氷の瞳が冷たさを増す。ブリザード並みの視線を受けながら焔の錬金術師は楽しげに続けた。 「ああもちろん費用なんか心配しないで下さい。私が責任を持って貴方に相応しい豪壮華麗なウェディングドレスをあつらえさせます。レースと薔薇に囲まれた貴方はさぞや美しい事でしょうね」 「調子に乗るなよ、マスタング」 狭い車内だからもちろんサーベルは抜けない。代わりに喉元に突きつけられたのは金の柄を持つ優美なドレスダガー 「良いじゃないですか少将閣下。この結婚は貴方のためのものだ。私はそれにつき合ってるのだから少しばかり遊んだっていいでしょう?」 ロイにとってこの結婚はプラスにはなるがどうしてもという程のものじゃない。棚からぼたもち的なもので気に入らなければ白紙に戻したって何の痛みもない。もちろんアームストロング少将との関係は悪化するだろうがそれは今さらだ。 「貴方にはこの結婚はどうしても必要な事だ。そうでしょう」 軽く指で押せばすっと刃は離れる。 「・・勝手にしろ。そう言う事なら貴様が破産するぐらい豪華なドレスを創ってもらうぞ」 「お任せを、我が花嫁」
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