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2014/04/07(月)
季節SS『白桜』
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『白桜』
「見事だな」 東方司令部の裏庭にひっそりと咲くその花の下黒髪の大佐と金髪の少尉は散りゆく白い花びらを静かに見ていた。 「はい。ピンクの奴も良いけど白いのもなんかきりっとしてて良いもんスね」 「お前にしては上等な事を言う。東の国ではこの花は潔く散るその様から武人の象徴とされるらしい。そいういう意味では確かに白い方が相応しいかもな」 「はーそう思えば余計綺麗に見えますね」 「だがその解釈は違うぞ、ハボ」 「はい?」 「考えてもみろ、散り際がどんなに潔くても次の年にはまた花を咲かせるんだぞ?この木だって冬の雪で枝が折れたりしてもこうしてまた見事な花を咲かせている。儚いなんてとんでもない、強かでしぶとい奴だよ。我々だってそうだ。例え冬に寒さに痛めつけられようと諦めずに生き抜いて花を咲かさなければならない。潔いなんて諦めと同じだ。ハボック、枝が折れ、幹を切り倒されても根っこだけでも生き延びるのが 我々の勤めだ。その事忘れないでくれよ」
─あの時の言葉が辛いリハビリの支えになりましたと同じ木の下でハボックが言うと黒髪の総統は静かにそうかと微笑んだ。
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