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2015/02/02(月)
ペーパー再掲
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今さらですがスパークの無配をアップします。
「冒険に関する二、三の考察」 冒険とはなにか。それは危険を承知であえて行動する事だ。成功の確証なんかない。いやむしろ失敗の確率の方が多いのかもしれない。それなのに1歩足を踏みだす事だ。愚行か?時間の浪費か?成功すれば賞賛されるが失敗すれば待ってるのは嘲笑だ。それでも人は冒険という名の大海に船を出す。 ところでここに一人の男がいる。金髪碧眼背は高くそこそこ見られる顔立ちで腕も立つ。もうちょっと真面目な性格なら騎士という役どころが似合ったろうが実際には彼の役は忠犬だ。 飼い主は黒髪に黒曜石の瞳で策士といわれる頭脳の持ち主。2人は同じ組織に属し上官と部下という間柄だ。─対外的には。それ以外ではどういう関係かはここでは割愛させて頂く。 何故ならとある日のとある午後に彼らが行おうとする行動こそが冒険の名に値するからだ。 「ロイ〜いくら何でもそりゃ無茶ですよ」 「何を言う、ハボこの焔の錬金術師ロイ・マスタングに不可能の文字はない」 とある建物の一室テーブルの上に広げられた1枚の紙が2人を冒険という愚行に誘う。 「だから俺が行ってくれば良い話でしょ?何であんたまで一緒に行くんだよ」 「馬鹿者兵は拙速を尊ぶ。ましてできたての味というのはあっと間に失われていくものだ。いくらお前の足が俊敏でもこればかりはどうしようもない」 この街随一のパティスリーが期間限定で販売するパンプキンタルト。行列必須夕方には完売が当り前という一品の販売は今日までだった。確実に手に入れるにはもう並ばないとまずいのだがいかせん彼らには仕事という枷がある。ここ1ヶ月北との演習でこの街を留守にしていた彼らにとってチャンスは今日しかないのに溜まった書類の期限は午後3時。こんな時の暢気にケーキ屋の行列に並びたいなどと言えるはずもない。 「だって扉の向こうの大部屋にはホークアイ中尉が陣取ってんスよ。大佐があのケーキ屋にご執心なの知ってんです。だから朝からずーっと目を光らしてんです」 冒険に必須のドラゴンはこの場合鷹の目を持つ副官だ。彼女の名誉のために言っておくがこんな切迫した事態になったのも元はと言えば黒髪の大佐のせい。やれデートだ、サボリだとのらりくらりと逃げるからこんな事になった。言わば自業自得である。が 「不可能な事業に乗り出す事こそが冒険だよ、ハボック少尉」 目を輝かせて言う主を止める言葉を忠犬は持っていなかった。
冒険それは危険を顧みずあえて不可能に挑戦するロマン溢れる愚行である。 ─結果がどうなるかは神のみぞ知るだが
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