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2005/09/13(火)
すっごく遅れた残暑見舞い
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「ねぇ、クレイアちゃん?」 「……なんですか。」 伸びてきたフィオルテの手をペチリ、とはたく。 「……泳ごうか。」 いつものつれない態度に苦笑して、フィオルテは立ち上がった。 「へっ?クレイアちゃん犬掻きしか出来ないの?」 間の抜けた、いかにも驚いた、という声。 水に入って数秒、そろそろ泳ぎ始めるか、という深さになっての告白だった。 「う〜ん、なかなかビックリだね……。そうだ、この際、なんか一個覚えよう、別の泳ぎ。」 「……まあ、いいですけど。」 驚かれたことに対して、若干の不満はあったようだが、それでもクレイアは了承した。 「じゃあ、何にするー?平泳ぎー?クロールー?」 同意が得られたことが嬉しいのか、二割り増しくらいでニコニコし始めるフィオルテ。 「ん、犬掻きと似てるからクロールにしようか。」 さらに、機嫌がいいのか、聞いておいて、クレイアが口を挟む前に決めてしまった。 「じゃあ、まずは〜……」 一人とんとんと先走るフィオルテに、苦笑するしかないクレイアだった。
「わー、クレイアちゃん上手上手〜。」 ぱちぱちと手を叩きながら、ご満悦のフィオルテ。その顔は、わずかではあるが、ところどころ腫れていた。 「……なんかバカにされてる気がするんですけど。」 「そんなことないって〜。」 微妙に不機嫌なクレイア。海面から顔を出すか出さないかで、頬を赤く染め膨らませていた。 あの後、ちょっとした練習だけで形の上でクロールをマスターしたクレイア。 元々運動神経は悪くないため、そんなに苦労はしなかった。 しかし、フィオルテのこと。文字通り手取り足取り、場合によっては他のところもとっての練習だった。 そのことは、フィオルテの顔の腫れと、クレイアの頬が証明している。 「ん〜、だいぶ形は泳げるようになったし、ちょっと休憩しようか。後はもう泳ぐだけだし。なんか食べ物買っとくけど、一緒に買いに行く?それともうちょっと泳いでる?」 「……もう少し泳いでます。」 若干警戒したような口調。 しかしフィオルテはそれを気にした風もなく、笑って岸に泳いでいった。 それを見送り、教えてもらった形どおりに手足を動かすクレイア。 なれない泳ぎであるためか、真っ直ぐ泳ぐことは出来ていないものの、進んではいる。 ただ、行き当たりばったりの感があるため、いつのまにか沖に出ていたことは当然なのか。 「……フィオルテさんも見えない……」 かなり遠くに来ていることにクレイアは気づく。海岸や浅瀬で水遊びをしている人々がかなり小さく見えていた。 「……戻りましょうか。」 一瞬走った悪寒に身を震わせ、岸に向けて泳ぎだした時。 「何、これ……!」 急に右足が動かなくなった。だが、何かに掴まれた感じはない。 (まさか……攣ったの?) ごぼごぼと沈んでいく。半ばパニックに陥り、必死にもがくが、体は浮かんではくれない。 逆にこわばった体は、沈むのを助長するばかり。 (……だめっ……!) ごぼっ、と息を吐いて沈みかけた時、クレイアは何かが自分を引き上げたのを感じた。 肺に空気が帰ってくる。その勢いでむせるクレイア。 「……大丈夫だった?クレイアちゃん?」 「フィオルテ、さん……?」 自分を引き上げてくれたのはフィオルテだった。 しかし、ありえない。食べ物を買いに、上がったのではなかったのか。 問うてみると、意外に明瞭な答えが返ってきた。 「だっておぼれてるのが見えたし。」 「見えた、んですか。」 「そう。クレイアちゃんのピンチなら、世界の反対側でも見えるよ〜。」 ごまかされているのか、答えてくれいるのか。 おそらくはそのどちらもなのだろう。 クレイアは追求をあきらめて、自分を背中に乗せようとするこのひょうきんな恋人に、体を預けることにした。
はい。時期はずれにもほどがある残暑見舞いです。 暑中見舞いをくれた、紫葵様と、蒼樹様には、手直しかけたしっかりしたやつを送りますです。
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