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2009/11/19(木)
冬支度(悲)
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冬の帽子を3つ持っている。そのうちの2つは、大学生時代に買ったものだから、もう30年以上もっていることになる。それほどかぶっていない。どちらかといえば、髪の毛の多いタイプで、自分の頭にあんまりあわないし、それに、それほどの必要性を感じなかったのである。帽子をかぶるなんて、やっぱり伊達だったのである。ところが、である。おとといだったか、ちょっと風の強い日があった。シカゴまで出かけるのに、ああ、なんと頭が言ったのである。帽子が欲しいと。。(悲)つまり、髪の毛が薄くなっているらしいのである。あああああ、年をとるとはこういうことか、とほんとに情けなくなってきた。男の人もはげていくわけだしなあ。。職場のトップのスティーブも、このあいだのごたごたで呼び出されたとき、久しぶりにゆっくり顔を見たら、えらく髪の毛が薄くなっているではないか。8年前にこの職場に来たときとはえらい違いだった。みんな年をとる。。。で、とうとう伊達ではなく、ほんとに帽子が必要な年齢になってしまったのである。30年以上もっている帽子だけれど、とうとう思いっきりかぶりこんで、捨ててやらねばならぬ。(悲)無事にシカゴについて、喫茶店で時間つぶしをしていたら、隣にじっちゃんが来た。小さな袋を持っている。で、すぐに携帯電話を使いはじめた。聞くともなく聞こえてくると、メアリという人に、パンプキンパイを買った、とごちゃごちゃ大声で話している。パンプキンでよかった?とかなんとか。。ふん、どうやらこの小袋にはパイがはいってるらしい。かわいいな、とは思ったものの、耳が聞こえにくいのか、大声である。回りに聞かせてやろうといわんばかりに大きい。年だから仕方ないかな、と思ったが、あまりにもうるさい。そのうち、パイを買ったぐらいで、ぐちゃぐちゃ電話しなくてもいいじゃないか、黙ってさっさと持って帰ればいいじゃないか、何、時間つぶししてるねん、黙って持って帰って、びっくりさせて喜ばせてやればいいじゃないか、と腹が立ってきた。(笑)やっと電話が終わったと思ったら、なんと今度は、別の女に電話しはじめた。今度は、ヒラリーである。食事時に電話して悪かった、とか何とか、これまたごたごたごた。。相手が困っているのなら、さっさと切ればいいじゃないか、とまた腹が立ってきた(笑)が、ふと思った。これって、もしかして全部一人芝居じゃないの、と。ほんとは、じっちゃん、家に帰っても誰もいないんじゃないの。袋に入っているのは、パイどころか、ただの手回り品なんじゃないの。。メアリだのヒラリーだの、寂しいから自分の頭の中で作った女友達なんじゃないの。。。携帯電話は、バーチャルの老人ホームを作りあげているのではないのだろうか。これもまた、帽子と同じく冬支度なのではあるまいか。 そう考えると、神戸に一人残している母親を思いだした。自分が人にしたことを、自分も人にされるという。。その法則でいくと、私も一人暮らしが長くなりそうである。でも、その覚悟をしなければならぬ。。今は、携帯電話なしの生活である。でも、いつまで続けられることか。携帯を肌身離さず持って、いつでも誰かに電話をしている気分を味わいたくなるような孤独がまもなくやってくるかも知れない。帽子と携帯電話ー誰にも必ず訪れる冬への準備である。でも、自分のための支度の時期が来ることを、誰が想像できよう。来たときにしかわからないのである。ああ、人生はほんとうに短い。。。(悲)
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