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2006/09/23(土)
『クミコ』さんと『越路』さん
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先日、NHKの歌番組に『クミコ』という、歌手が出演していた。語るように歌い上げるその歌は、まるでドラマを見ているようで、私には、越路吹雪さんの再来かと思わせられました。
関西人の私は、小さい頃から舞台といえば『吉本』か『松竹新喜劇』、歌といえば『歌謡曲』と、テレビの世界の芸能界しかしりませんでした。
しかし、昭和47年に上京して日生劇場の大道具をしていた時、越路吹雪さんのロングリサイタルや、ミュージカルを何度も手伝わせて頂き、自分の知らないエンターテインメント(芸能)の世界があることを知りました。 それは、私にとって大きなカルチャーショック(衝撃)でした。
越路吹雪さんの舞台で感じたのは、(エンターテイナーというより)芸人のすさまじい生き様でした。
当時、越路さんの年齢は、40歳代後半で円熟期だったのでしょうか、すばらしいステージでした。
『アプローズ』というミュージカルでは若いダンサーと共に舞台狭しと、激しい振りを踊っておられました。
私が驚いたのは、踊りが終わって舞台袖に引っ込んで来られた途端、倒れ込まるのです。待ち構えておられる二人の男性の付き人(ダンサー)に支えられないと動けないぐらいの状態で、毎回、引きずられるように、控え室へと向かわれておりました。
その時、私は、てっきり越路さんは、どこか具合が悪いのだろうと思い込んでいました。
私が後になって習ったジャズダンスで、30秒程の激しいダンスを踊っただけで、酸欠で死にそうになった経験をしてからは、あの時の越路さんの気持ちが少しは分かったような気がしました。
そして次の出番では、やはり二人の付き人に支えられながら、舞台袖まで連れて来られ、いざ出番となると、手から野鳥を放ったように舞台へと羽ばたかれるのです。
でも年齢から考えても、あの時のステージは毎回、自分の限界ギリギリに挑戦しておられたのでしょう、信じられない程の執念を感じました。
又、『ロングリサイタル』では、5〜6人編成のコンボバンドで、シンプルなバック演奏でしたが、一曲、一曲、心にしみる歌声でした。
特に『人生は過ぎゆく』という歌は、当時19歳の私には今まで味わったことのない衝撃で、身体が電流に打たれたように、背筋が『ゾクッ』としました。そして「歌にはこんなパワーがあるのか!」と、感じ入りました。
惜しいことに、1980年、56歳という若さでお亡くなりになり、もう二度とあの感動は味わえないだろうと諦めていました。
しかし、先日、何気なく見ていた、NHKの歌番組で『クミコ』という生き様を感じる歌手に出会いました、きっと彼女ならこの歌を唄い上げることが出来るのでは・・と思い、早速、関係者にメールでお尋ねしました。
すると、もうすでに歌われているとのことで、私は何だか嬉しくなりました。
越路吹雪さんを知らない若い方も、是非『クミコ』ご注目下さい。
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