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2006/11/10(金)
ぶぶちゃんのおはなし
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わたしは神戸で生まれました。 お母さんと、きょうだいも、多分、いたと思うけど、覚えてないの。 大きな音がして、大地が大きく揺れて、 気がついたら、瓦礫の町で、ひとりぽっちだったの。 寒くて、暗くて、怖くて、お腹はすくし、悲しくてミーミー鳴いていたら、 通りかかったお兄ちゃんが抱き上げてくれたのです。 どう見ても、イケメンじゃないけど、とてもやさしい目をしたお兄ちゃん。 メチャクチャに壊れたアパートにつれて帰ってくれました。 お兄ちゃんは、自分も食べてないのに、わたしに食べさせてくれました。 電気もガスも無い部屋で、 「おい、助かってよかったなぁ〜。一緒に生きていこうぜー」 と、わたしを抱きしめてくれました。 その夜から、ずっと、お兄ちゃんといっしょでした。 お兄ちゃんはビンボーなのに、わたしを食べさせてくれました。
お兄ちゃんの仕事の都合で、神戸から、運命の広島へ来ました。 ここでも、狭いアパートで、お兄ちゃんと暮らしました。 時々、何日も帰ってこない時もあったけど、ご飯とお水はちゃんと置いていってくれました。 わたしは家ネコで、お外には出たことがありません。 ところが、ある日、突然、ちょっと広いお部屋に引っ越しました。 そこには、時々会ったことのあるお姉ちゃんと、な、なんと、3匹のネコがいたのです。 お兄ちゃんと静かに過ごしていた生活が一変してしまったのです。 どうも、お姉ちゃんは、お兄ちゃんの奥さんになったようです。 お姉ちゃんは贔屓なんかしなくて、わたしもかわいがってくれたですよ。 問題は、3匹のネコたちのボス・マーニャンです。 このボスネコとわたしの、バトルの日々が始まったのです。 向こうはボスを譲らないし、わたしだって、今さら、子分になるのはいや。 威嚇しあったり、追っかけまわしたり、にぎやかな日々が始まったのです。 そんな感じで、3年の月日が流れたのでした。
体に異変を感じたのは、夏の初めだったかしら。 病院へ連れて行ってもらったんだけどね、 先生の話を聞きながらお姉ちゃんが泣いているので、もしかしたら、もしかするかも、と、心配しました。 どうも、その心配は当ったようです。 癌が出来てて、それも、どうも手遅れだったようです。 秋になって、お腹が膨れてきました。 息も苦しくなって、マーニャンと喧嘩も出来なくなりました。 マーニャンも、なんだか、おとなしい・・・。
そして、今日、わたしは12年の生涯を終えました。 この12年で6回の引越し、2回の地震(広島でも怖い目をしたのよ。アパート、ぼろだったし)を経験したけど、 とうとう外の世界は窓から見るだけだったなぁ〜。 マーニャンとも、仲良くできなかったなぁ〜。 今から、虹の橋を渡っていくね。 さようなら、お兄ちゃん、お姉ちゃん。 あまり、喧嘩しないでね。 それから、わたしを拾ってくれてありがとう。 おいしいご飯も、ありがとう。 服を作ってくれてありがとう。 看病してくれてありがとう。 わたしのために、泣いてくれて、ありがとう。 たくさん、たくさん、ありがとう。
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