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2007/03/07(水)
カフェ蔵という犬
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7年まえから一匹の犬を飼っている。 雑種のオスで名前は店名の『珈琲蔵』をもじってカフェ蔵という。 どうしてカフェ蔵というようになったのかそのいわれはまた後日説明するとしてこのカフェ蔵は雑種のくせに由緒正しい犬なのである。 どういうふうに由緒が正しいかというとこいつはお婆さん犬まで遡る事ができるのだ。 そもそもカフェ蔵のお婆さんは俺の店で10年くらいまえに働いていたバイトの男の子の家で飼われていた犬なのである。 白い大きな犬でそいつは無難に『シロ』という名前だった。 そのシロが子犬を生んだ。 生まれた子犬を違うバイトの子が貰った。 その貰われた子犬がやがて大きくなって子犬を生んだ。 その生まれた子犬がカフェ蔵なのである。 当初は貰い手が見つかるまで俺の店先で遊ばして置くつもりの軽い気持ちで引き取った犬だったのであるがどういうわけか他の兄弟は次々と貰い手が決まって行くのにこいつだけは一向に引き取り手が決まらない。 そうこうしているうちにすっかり大きくなってしまい婚期を逸してしまった。 以来俺の店を自分の家を心得て今日に至っているというわけである。 夕方の散歩を無上の喜びとし後は無欲に餌箱に残っている食べ残しを雀がついばみにきても頓着せずあくびをしている。 幸い小さいころから大勢の人にかわいがられて大きくなってきたので人見知りはしない。 いつも大きなガラス窓の向こうから店内の様子を伺っている。 お客さんからはそんなカフェ蔵が可愛いと大好評である。 犬を眺めながらコーヒーを飲むのも悪くないという人もいる。 しかし案外カフェ蔵からしてみたらそんな俺達人間を暇つぶしに眺めているのかもしれない。 今日も日だまりの中カフェ蔵が所在なげに店を見ている。
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