マスターのひとりごと
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2007/03/09(金) 汚れた靴
今日は昔アルバイトしていたsの近況を聞く事が出来た。
sは俺の店で長い間頑張って働いてくれた子だった。
将来自分もカフェを持ちたいというのがsの夢だった。
そのsがいきなり工場で働くので店を辞めさせて欲しいと言って来たとき俺はかなり強く反対した。
カフェの勉強はまだ完成されていたわけではないし肉体労働とカフェのセンスが俺の中で融合しなかったからである。
しかしかたくなに辞めることを主張したsは俺の反対を押し切って店から去って行った。
それから2年。
一向にsの噂も聞く事が無く月日は流れた。
そして今日の午後。
sが俺の店を辞めたあと工場も長続きせずそのあと暫くお世話になっていた居酒屋のご主人がコーヒーを飲みに来てくれたのだ。
最初は勿論sがその居酒屋で働いていた事など知るよしもない俺であったが色々話して行くうちにsの事を聞かされた。
その人いわくsはいつもぼろぼろになったスニーカーをはいていたとの事。
『穴とか開いてとても靴の体裁をとっていない靴だったなあ』
とその人は言った。
『捨てたらって言っても絶対捨てないって言うんだよなあ.何故なんだろう』
その人は聞いて来る。
『さあ』
と曖昧に笑って答えたけれどその理由を俺は知っていた。
それは俺がsに誕生日プレゼントとして買ってやった靴だったのだ。
会わなくなって2年近くたつが未だにsは俺が買ってやった靴を履き続けてくれていた。
それは訳も無く胸の内が熱くなって来た瞬間だった。


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