マスターのひとりごと
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2009/01/24(土) 麗しの鎖骨
ダイエットを開始してから半年。
100キロ近くあった体重がついに70キロをきった。
試しにどんなサイズのシャツが入るようになったのか先日、行ったバーゲン先のショップで色々な服を試着させてもらった。
若い子の服はいつ見ても可愛い。
購買意欲をそそられるものばかりだ。
俺は並んでいる商品の中から特に若者指向の物を手に取ってみた。
かつてはXLでさえおぼつかなかった俺だ。
その時の俺にはこんな可愛い服は夢のまた夢だった。
手に取った瞬間、もしかしたらいけるかも知れないという予感が走った。
しかしさすがにいきなりMから行く勇気はなかったのでショップの人も当然の如く差し出すLを俺はごく自然に手に取っていた。
頭を通した時それはするすると文字どおり滑るように俺の体に沿って来た。
楽勝ではいったのだ。
あまつさえそれはブカブカでかなり余裕さえある。
まさか、、、
『Mのほうがいいっすね』
ショップのお兄さんのいささか軽薄な物言いがその時ほど耳に心地よく響いたことはない。
『そうかなぁ』
一応、俺は謙遜しつつ彼が差し出すMを恐る恐る着てみたところ、これがまたもやすんなり入ってしまったのだ。
その事実にびっくり。
そして鏡に映っている自分の姿にもう一度びっくり。
一年前、新宿のカフェでつのだ☆ひろに本気で間違われた俺の襟もとに今まさにうっすらと浮かんでいるのはダイエットを目指す人なら誰でも一度は夢に見るあの麗しの鎖骨ではないか。
俺の永久凍土のようだった脂肪の層が薄れる事によってその堆積の下から麗しの鎖骨が出現してきたのだ。
お前はシベリアのマンモスより貴重な存在だ。
そう思った瞬間その鎖骨を覆ういささか乾燥した肌の表面に細かく走っている無数の縮緬皺が見えた。
それは細かく紙を揉んだ後にできるような不健康な印象を強める皺だ。
体内に収まりきらないほどの脂肪ではち切れそうだったかつての皮膚。
中身がすっかり無くなってしまった後のたるんだその皮に無数の皺が哀れにも刻印されているのだ。
その皺は身に纏っている若々しい服と相反する作用を起こし一瞬俺の風貌を年齢不詳の男に変えた。
なんか哀しい。
さらに横を向いて見た。
腹部は平になっていていいようなものの全体に厚みがなく薄っぺらだ。
それがよけいに哀しさを際立たせる。
今は分厚い毛編みのセーターなんかを身に纏っているのでその著しい変化がわからないかもしれないが薄着になったら顕著になるだろう。
いきなり他人にみせたら驚きを通り越してその激やせぶりが心配されるかもしれない。
春になって薄着になる時はいきなりではなく順を追って行かなくてはなぁとマジで思った俺だ。
それにしてもこの縮緬皺、なんとからなんものか。
折角の麗しの鎖骨の値打ちが半減してしまうがな。
そんな思いを抱いた俺であった。


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