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2011/02/18(金)
362 幻の酒
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「どぶろく」と銘打った市販の酒があるのだ。 信州の酒。上澄みが分離し、一升瓶の底にいくほど濁りが濃い。
私たち4人と、おかみさんとで「どぶろく」談義が盛り上がる。 山懐の集落で育った彼女は、「密造酒Gメンの査察が入ると『鬼が来た!! 』と隣触れに駆け回ったもんだ」。
各家々で緊急度に応じた対応があるのだが、 にっちもさっちもいかなくなればトイレや川へ……
これといった楽しみのない昔、お目こぼしもあってもよさそうなのだが、 知恵比べ、イタチごっこが続いたそうな。
今では、どぶろく特区もできるご時世。そんな話もとんと聞かない。 でも、昔から“御禁制の品”であることには変わりない。
名人と呼ばれる造り手が亡くなり、遺品ともいえる残りわずかの「どぶろく」が飲めるかもしれない…… 世の男性、特に飲ん兵衛には、この手の誘いは絶大な効力がある。
1も2もなく出掛けた。露払いの信州の酒は、とっくりから泡があふれ出るほど発酵が進行中。猪口の酒も泡立っている。 固形物も多く「まるで噛む酒」。とっぷりと酔いました。
さて、“御禁制の品”は、幻の酒に終わったのか…… 記憶が定かでない。
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