コノサキニミエルケシキ
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2005/09/04(日) お題…【窓】 近衛天涯
† おとぎばなし †


その国のお姫様は、とある高い塔に
独り閉じ込められていました。

記憶はもう曖昧ですが、
ある晩、何か恐いものから逃げていて
この塔に迷い込んでしまったのです。

その塔には何か悪い魔法でもかけられていたのか、
何処にも出口はありませんでした。
それどころか、
入ってきたはずの入り口さえ消えてしまっていました。

此処から出られないと知った姫は
それ以来、毎日涙に臥せっていました。

それからどれくらいの月日が経ったでしょう。
時計も何もないこの部屋では時間など解りません。
1分がどれくらいの長さだったのかも
姫にはもう解りませんでした。

そうして
夜が昼となり 昼が夜となり
いくつも季節が移ってゆきました。

塔にいる姫にはもちろん
どれくらいの季節が巡ったのか見当がつきませんが、
だんだんと自分が衰弱していくのを
感じ始めていました。

どんなに待っていても
助けてくれる人は現れません。
姫はただただ涙に伏せていました。

いよいよ体も動かなくなってゆき、
消えそうになる意識の中で
ふと誰かの声を聞いたような気がしました。

姫は涙を拭い、声のした方を見上げてみました。

するとどうでしょう。
真っ暗なはずの塔の一角から
小さな光が射しています。
耳を澄ますと小鳥たちのさえずりも聞こえるようです。

その光がいつからそこに在ったのか
いつも泣き伏していた姫には気付きませんでした。
けれどそれは、手を伸ばせば届きそうな所にあったのです。

『ああ…見上げれば、そこに在ったのだわ』

姫にはようやくそれが何なのか解りました。
姫はわずかに微笑みながら、そっと手を伸ばしてみました。
すると、風や、乾いた空気を感じることが出来ました。

(そういえば、私はいつも泣いてばかりで
 この世界を見上げることなんてしなかった。
 出口はないと、思い込んでしまっていたのだわ。)

見上げればいつもそこにそれは在ったのに。
外の世界から、風や小鳥のさえずりや、
陽の輝きを運んでくれるもの。

少し見上げるだけでよかったのに。
私はそれさえも諦めてしまっていたのだわ。

もう間に合わないと気付きながらも、
姫の口元には満足げな笑みが浮かんでいました。

『私はもう間に合わないけれど、最期に気づく事ができて良かったわ』

今から私の魂はその光へと向かって羽ばたいてゆくでしょうから。

姫は最期に聞こえた声が
自分の声に似ていたことを思い出し、
微笑みながら、ゆっくりと目を閉じました。


                       おわり。

++++++++++++++++++++++++++++

……長っ!!!!!笑。でもこれでも頑張ったのだ。

えと、じゃあ次のお題は…
【雪】 ね!笑。や、涼しそうかなぁって。えへ。よろすく。


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