Fever!!
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2005/12/24(土) クリスマスSS(ラビュ)
 読める自信のある方は反転Go!


** christmas present ** (仔ラビ×仔神田)

 その日はとりわけ寒かった。

 黒聖学園少等部。
 そこに通うオレは、その季節、学校に通うのが楽しくてたまらなかった。
 正しくは登下校の道を歩くのが楽しくて楽しくて、たまらなかった。

 終了式が終わって、HRが終わって。
 鞄に荷物を押し込んだオレは、ウキウキと隣のクラスに向かう。
 俺のクラスよりも早くHRが終わったらしく、教室には生徒達が半分くらいしかいなかった。

 オレはちょっとだけ焦って、中を覗き込んだ。
 真っ先に目に入るはずの、綺麗な黒髪を目で捜す。

 いない?
 もしかして。
 先に、帰っちゃった?

 途端に、それまでのウキウキががっくりに変わる。
 ヒドイ。ヒドイよ、ユウ……。
 オレが、一緒に帰るのすっごく楽しみにしてるの、知ってるはずなのに……。

「オイ、邪魔」
「へ?」

 背後から聞こえた澄んだ声に、慌てて振り返ると。
 目の前で、捜し求めた翠の黒髪がツヤツヤと天使の輪っかを乗せて輝いていた。

「ど、どこいってたの?」
「職員室。日直だったから日誌持っていってた」

 言いながら、ユウは俺を退けて教室へと入っていく。
 その後ろを付いてユウの席までいくと、彼はもう帰り支度を済ませた鞄を持って振り返った。

「帰るぜ?」
「うん!」

 ユウの言葉に、オレは満面の笑みで答えた。

 初対面で女の子だと思って一目惚れした相手は、どさまぎでチューしたオレに、渾身の一撃で鉄拳制裁したうえで、友人にしてくれた。
 ユウが女の子でなかったのは、オレにとってはかなりのショックだったが、だがしかし考えれば考えるほどに、そんなことは些細な問題でしか無いように思えた。
 むしろ、女の子じゃないからこそ、どんなときでも傍にいれるって分かったから。

 校門を抜けたところで、オレはユウの左手にするりと自分の右手を絡ませる。
 互いの指と指を組み合わせるように絡め、きゅっと軽く力を込めた。
 所謂、恋人繋ぎだ。
 初めの頃こそぎゃんぎゃん文句を言っていたユウだったが、もう慣れてしまったのか最近では何も言わなくなってしまった。
 真面目なわりには面倒くさがりなところがあるユウは、慣れて気にならなくなってしまうと文句を言うのも面倒になるらしい。

「ラビ」
「うん?」
「お前、何でいつも手繋ぐの?」
「だって暖かいんだもん。独りじゃないって安心できるし」
「……」

 それまで、親しい友人なんか一人もいなかった俺は、わざとそう言ってみる。
 この頃のユウは、本当に素直で、オレのいう言葉にあっさりと同情してくれたようだった。
 いや、案外、承知の上で騙されてくれていたのかも知れないんだけど。

「明後日、ユウんちはなにかするの?」
「……なんかって?」
「え、だってイブじゃん。クリスマスイブ」

 そこまで聞いて、ああ、とユウはようやく納得したように頷いた。

「デイシャがご馳走ご馳走言ってたから、ケーキくらい出るんじゃねえ?」

 俺はいらねェけどな、と付け加えて興味なさげにユウは白い息を吐いた。

「じゃあ、プレゼントは? なんかもらうの?」
「師匠がなんか欲しいモンはって聞いてきたけど、いらねえって言っといた」

 ふるふると首を振って応えたユウに、オレはそのまま素直に疑問を投げた。

「ユウ、欲しいもの無いの? トレーディングカードとかゲーム機とか」
「別に……俺ゲーム下手だし、カードとか興味ねェし……新しい竹刀欲しいってのは去年使っちまったからな」
「う〜ん、それはちょっと言われた方も切ないかも」

 ちょっとだけ、ユウの後見人に同情した。
 折角のクリスマスに、ちっとも子供らしい我侭を言ってもらえないのは、それはそれで不幸だと思う。
 そんなことを全く分かっていないユウは、自分のことは棚上げで、オレの方に質問を振ってきた。

「お前は? お前のジジイ、なんか買ってくれるんだろ?」
「うん、チェス盤欲しいって頼んだ」
「チェス?」
「そ。クリスタル製のすごく綺麗なヤツ。ユウ、教えてあげるから一緒にやろ?」

 ニコッと笑いかけたオレに、ユウは眉を寄せた困り顔を返してきた。

「……俺、頭使うの苦手だし、お前には絶対勝てねェと思うんだけど?」
「大丈夫、ちゃんと教えてあげるし、いっぱい時間かけて考えていいから。なんだったらオレ、クイーン抜きでもいいよ」
「クイーン抜き?」
「うん。クイーンってチェスで一番強い駒なんさ。前後左右は勿論、斜めにも好きなだけ進めるの」
「へぇー」

 ちょっと興味を持ったのか、ユウは俺の顔をじいっと見つめてくる。

「オレはそれ抜きでやるから、そしたらユウ、初めてでも勝てるかもしんないだろ?」
「うん」
「じゃ、クリスマスの朝、うちに遊びに来て。一緒にプレゼント開けよ?」
「分かった」

 こくんと頷いて笑ったユウの顔を見て、オレはひどく幸せな予感がした。
 今年のクリスマスは、今迄で一番のプレゼントをもらえそうだったから。

 右手に軽く力を込めて、その暖かさを確かめる。
 凍り付いてしまいそうな冷たい外気も、全然気にならなくなってしまった。

 ジジイにクリスマスにチェス盤を希望したのは本当だし、欲しかったのも事実だ。
 でもクリスマスの朝にオレが一番欲しかったのは。

 一緒にチェスをしてくれる、キミ。

END


 クイーン抜きにしてもらっても、私は負けますけどね(笑)
 ラビのクイーンはユウちゃんなので、チェス駒のクイーンくらい無くても全く問題無し!<ドリーマー発見


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