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2013/06/28(金)
『エリザベスタウン』のスクラップブック
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やはり、顔がいいというのは得だ。 『エリザベスタウン』のドリュー(オーランド・ブルーム)は、会社に天文学的な損害を与えてクビになり、自殺を考えていたところでさらに父親を亡くすというダブルショックを受ける。 父の遺体を引き取りに飛び乗った飛行機で、かれは客室乗務員のクレア(キルステン・ダンスト)に出会う。
ドリューがふつうにブサイクな男だったら。父の葬式を終え次第、そのまま1人さびしく自殺してハイおしまい、だったはずである。 しかし、かれは極上の二枚目。女がほっとくはずがない。偶然出会っただけのクレアが、頼まれもしないのにちゃんと世話をやいてくれるわけである。かれは最終的に自殺を思いとどまり、人生に希望を見出していく。
ケッ! いいよな二枚目はよォ。ふだんなら、そう毒づいて終わりにするところであるが、この映画は芸が細かいので、ついついのせられてしまう。
たとえば、ドリューとクレアの出会いだ。 乗客と客室乗務員の偶然のめぐり会い。どうやってもワザとらしくなってしまいそうなところだが、この映画では廃線まぎわの便に乗客はドリュー1人だけ、というシチュエーションを用意する。かなりの力技だが、絶対にないとは言い切れない。ほかに客がいないのだから、2人が会話を始めるのはとても自然だ。うまい。うまくノセられて、二枚目への反感なんていつのまにやら忘れてしまう。ガラにもなく、思わずグッときてしまう。
グッとくるといえば、映画のおしまいのほうでクレアがドリューにおくるスクラップブック。これがイイ。こういうの、ほしい。
ドリューは父の遺灰を助手席に乗せ、2日間ほど車で旅をするのだが、そのときのナビ役になるのがクレアの手作りのスクラップブックである。
分厚いスクラップブックには地図とか写真とかがベタベタ貼り付けてあって、旅の指示がサインペンで細々と書き込んである。ここに寄れとか、誰と会えとか。 ポケットに入れたCDもいっぱいくっつけてあって、「この道を走るときはこのBGMを」なんてことまでみっしり書いてある。
「この曲には風が必要よ。風を入れて」 なんて指示、いいよなあ。
ちょうどドリューの気分がヘコむ頃合を見計らって、「落ち込んだ時は、ここで1人で踊ること!」なんて書き込みも。 なんていい娘なんだ!
しかし、こういう素敵なスクラップブックを手に入れられるのは、やっぱりオーランド・ブルームのような二枚目だけなんだよねえ。なんだか切なくなってしまいました。
…………………………………………………………… 『エリザベスタウン』(2005年、米)4月21日DVD発売 原題/Elizabethtown 監督/キャメロン・クロウ 出演/オーランド・ブルーム、キルステン・ダンスト 他 ……………………………………………………………
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