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2004/03/03(水)
たそがれ清兵衛
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今日もアカデミー賞の話題を。
個人的には渡辺謙より取ってほしかったのが『たそがれ清衛』だ。 去年、国内ではかずかずの映画賞を総なめにしたのに、アメリカでは黙殺されたのかと思っていたので、今年のノミネートはほんとうにうれしかった。
去年は珍しく3本もの邦画を見てどれも面白かったのだが、ベストはやはり『たそがれ…』だった。
まず惹きつけられたのが、朋江を演じる宮沢りえの立居振舞いの美しさだ。現代の女性は特別なときしか和服を着ないから、身に着けたときの挙措動作が美しくないし、着こなしも首をひねるようなものが多い。それは普段和服を着慣れていないからであって、けっして彼女たちの責任ではないと思うのだが、ときには下品に感じることすらあって、げんなりしてしまう。 だから、スクリーンに現れた宮沢りえの凛とした姿に息を呑んでしまった。
もうひとつ敬服したのが、山田洋次監督が徹底的にこだわったというリアリズムだ。 五十石という下級武士の貧しい暮らし、結核に倒れた妻の薬代のために急速に傾いていく生活、内職の虫かご作りのために同僚の誘いも断って帰っていく姿、老人性痴呆症の老いた母への介護、DV(ドメスティック・ヴァイオレンス)に耐えられずに婚家を飛び出す朋江と、そのために武士の体面を傷つけられた元夫、藩主の急死とそれに続く跡目争い、それに巻き込まれて突然切腹を命じられる元浪人(田中泯)…。 こうやって並べてみると改めて気づくのだが、これらはすべて極めて今日的なエピソードなのだ。 ところが、山田監督の綿密な時代考証や演出によって、これらが無理なくストーリーの中に溶け込んでいるから、ぼくたちは何の違和感を感じることもなく、クライマックスの大立ち回りまでスクリーンに呑み込まれてしまう。
真田弘之や舞踏家田中泯の抑えた演技も素晴らしいし、長沼六男のカメラも美しい。 あー、ほんとにアカデミー賞取ってほしかったなあ。 選考会では僅差だったというし、ほんとうに惜しかった。
今からDVD見ると、寝るのは…。やっぱ今日はやめとこう(笑)。
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