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2004/04/18(日)
鷺沢萠 その2
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もう少し鷺沢萠のことを書く。 今日久しぶりに「葉桜の日」を読み返した。
最初のほう、マモルさんのお葬式から帰る場面でこんな描写がある。
外に出ると生あたたかい夜風に桜の花びらが踊らされていた。 コンクリートに靴音を刻むと、街灯のせいで薄白く透けて見える花びらがひと足ごとに浮きあがる。舗道に敷きつめられたそれの動きはひどくスローモーで、ちょっと水の中の動きにも似ていた。
ほんとうにこんな季節に、鷺沢萠は帰らぬ人となってしまった。
20歳のときに祖母が韓国人であったことを知ったという彼女の出自にまつわるエピソードは、「自分とはいったい何者なのか」という「葉桜の日」のテーマととても深く関わっているだろうと思う。 在日コリアンとしての「孤独」が彼女を死に追いやったのではない、と今は思いたい。
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