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2004/09/16(木)
JAZZの愛聴盤-8
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秋の夜長にはクールなジャズを…。
『GRAND ENCOUNTER(偉大なる邂逅)』とはまた大袈裟なタイトルをつけたものである。 だれが恥ずかしいって、レコーディングに集まった当人たちがいちばん恥ずかしかっただろう。 録音は1956年2月10日、ハリウッドである。 当時はウエスト・コースト・ジャズと呼ばれる、アレンジやアンサンブルにこだわったクールなジャズの全盛期であった(厳密にいうともうイースト・コーストでマイルズやロリンズが反撃の狼煙を上げていたけれど……)。 スタジオに集まったのはウエスト・コースト・ジャズの中心人物の一人だった、ドラムスのチコ・ハミルトン、白人テナー奏者として1、2位を争う人気のビル・パーキンス、当時はまだ西海岸で活動をしていたギタリスト、ジム・ホールという3人に、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)のピアニスト、ジョン・ルイスとベースのパーシー・ヒース。 つまりウエスト・コーストの3人とイースト・コーストの2人が、パシフィック・ジャズという西海岸の名門ジャズ・レーベルの録音に顔を揃えたのである。 そこで「偉大なる邂逅」(笑)。
曲はジェローム・カーンの名曲「LOVE ME OR LEAVE ME」から始まる。 ジョンのやや哀愁を帯びたイントロから、テーマの提示を経て、最初に出るビル・パーキンスがやはり素晴らしい!レスター・ヤングゆずりの柔らかくてスムーズなトーンで、美しいソロを綴ってゆく。 そのあとを受けるジム・ホールのソロがブルージーでまたいいのだ。 3番手はジョン・ルイス。MJQでおなじみの、高雅な趣きに溢れる簡潔なソロだ。
トリオで演奏される、ヴァーノン・デュークの「言い出しかねて(I Can't Get Started)」、ジム・ホールの加わったカルテットによる、ホーギー・カーマイケルの「Skylark」、5人による「Easy Living」、ラーナー&ロウの「恋をしたみたい(Almost Like Being Love)」と、スタンダード・ナンバーがずらりと並ぶ。 そんななかで、1曲だけジョン・ルイスによるブルーズ「2度東、3度西(2 Degrees East-3 Degrees West)」がまた素晴らしい。タイトルはもちろん5人の出会いをかけたもの。 チコのトレードマークのようなティンパニのバックに乗って、テナーとピアノがユニゾンでテーマを奏で、そのままそれをバッキングにベースのソロが始まる。かっこいい!!ジム・ホールの渋いギター・ソロを挟んで、ビルのテナーがスタイリッシュに空間を埋めてゆく、そのバックのジョンの音数を抑えた簡素なバッキングも見事だ。
もうひとつジャケットがまた素晴らしい。
ぼくは最近のヴィーナス・レコードのように、露骨に女性のヌードや下着姿をあしらったジャケットが好きではないが、こういう健康的なものには弱い。 中身を知らなくても思わずジャケ買いしてしまいそうな1枚です。
"GRAND ENCOUNTER / 2 EAST 3 WEST" PACIFFIC JAZZ PJ-1217
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