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2005/03/31(木) 紙ジャケ−ジャケ買い
以前からどうにもジャケットが気になっていたCDがあった。
トニー・コジネクの『バッド・ガール・ソングス』というCDだ。
コジネク?どこの人だろう?
と思って調べてみると、イギリスのリーズ生まれでトロント育ちだという。
ふーむ。それにしては珍しい姓だなあ。

このアルバム、Appleでもジェイムズ・テイラーのファースト・ソロをプロデュースしたピーター・アッシャー(ピーター&ゴードンのピーターですね)のプロデュース作品である。
じゃあ、悪くはないだろうと思って、ジャケ買いしてみた。
ふつうジャケ買いっていうと綺麗なおねいさんの写真(笑)なんだが、それにしても妙に気になる絵でしょう?

まだじゅうぶんには聞き込んでいないのだけれど、内容的には、やはりジェイムズ・テイラーにも通じる英国SSW特有の繊細で少しくすんだような、独特の雰囲気をもつ楽曲が並んでいる。

これもほとんどジャケ買いだったフォザリンゲイとともに、なかなか素敵なアルバムでした。

2005/03/28(月) バングラデシュのコンサート
うちのレコード・ラックはディノスで注文した組み立て式なので、今回の福岡西方沖地震でネジが緩んでしまった。
幸いなかのレコードに被害はなかったが、ラックのネジをもう一度締め直しているうちに1971年にジョージ・ハリスンが提唱したチャリティー・コンサートのレーザー・ディスクに目が留まって、久しぶりに見てしまった。

このコンサートは、シタール奏者のラヴィ・シャンカールからバングラデシュの惨状を聴いたジョージが呼びかけて、 1971年8月にニューヨークのマディスン・スクウェア・ガーデンで開催されたもので、4万人の聴衆が集まり、記録映画にも撮られて全世界で公開された。
ぼくも中学生のとき、この記録映画を見に行き、動くジョージ、動くクラプトン、動くバッド・フィンガー、動くディラン……、そういう今までレコードでしか聴いたことのなかった憬れのスター・プレイヤーたちを目の当たりにして興奮したのだった。

最近、このコンサートのライヴ・レコードの記事をたまちさんのサイトでも拝見していて、久しぶりに見たいなあと思いながら忘れていたのだった。

いやあ、それにしても当時はジョージもクラプトンもまだ20代半ば、クラウス・フォアマンにしても、ディランにしてもかっこいいのなんのって!

そしてディランのヴォーカルとハーモニカに、ジョージとリオン・ラッセルがハーモニーを付ける、そのシーンの感動的なこと!

デジタル・リマスタリングした映像と、7.1チャンネルdts音声つきのDVDで早く再リリースしてほしいものだ。

2005/03/27(日) JAZZの愛聴盤-13
ジャズに詳しい方ならご存知だと思うが、ダグ・ワトキンスは、同じベース奏者ポール・チェンバーズの1歳違いの従兄である。
だが、そういうエクスキューズが必要ないほど、彼は傑出したベース・プレイヤーであった。
54年にアート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズの初代ベーシストとしてレコーディング・デビューを飾り、56年にはソニー・ロリンズのあの畢生の名作『サキソフォン・コロッサス』のレコーディングに参加している。
1962年の2月5日に自動車事故のためわずか27歳で亡くなったため、いわゆるジャズ・ジャイアントと呼ばれることは少ないが、ジャッキー・マクリーンの『4、5 & 6』やリー・モーガンの『キャンディー』など、ダグが参加したアルバムで名盤といわれるものはたくさんある。

さて、今回ご紹介するのはそういう彼のわずか2枚のリーダー・アルバムのなかの1枚、『ワトキンス・アット・ラージ』である。

このアルバムはトランジションという超マイナー・レーベル(あのセシル・テイラーの初リーダー・アルバム『ジャズ・アドヴァンス』で有名)への吹込みであるため、長い間幻の名盤と呼ばれていたものである。

パーソネルはドナルド・バードのトランペット、ハンク・モブリーのテナー・サックス、ピアノがデューク・ジョーダン、ギターにケニー・バレル、アート・テイラーのドラムスにダグというもの。
メンバーを見ただけで、リラックスした心温まるセッションであることが想像できると思うが、トラディショナルの「フィル・T・マクナスティー・ブルーズ」に始まって、バレル作の「フィナッピ」までの5曲はいずれも肩の凝らぬ演奏ばかりだ。
というと、ぬるま湯のようなセッションを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれないが、この日はフロントを務めるバードもモブリーも絶好調で、1曲目からぶんぶん飛ばしている。ダグのベースも、いわゆるウォーキング・ベースなのだが、気心の知れたアート・テイラーとがっちりした音楽の土台を作っている。
そして、ジョーダンのピアノが、これまた相変わらずの歌心あふれる素晴らしいピアノで、ブルージーなバレルと好対照な演奏を聞かせてくれる。

土曜の夜や日曜日の昼下がりなどに、ちょっと気持ちのいいジャズを聴きたいなと思うときにはうってつけのアルバムである。

なお、タイトルはライヴっぽいし、フロント・カヴァーにも「in LIVE CONCERT FIDELITY」と書いてあるが、ライヴではない。
また、東芝から復刻されたアナログ盤とCDでは曲順が違っているが、ここではアナログ盤の曲順で紹介している。


DOUG WATKINS "WATKINS AT LARGE"
TRANSITION TRLP 20

2005/03/19(土) ブラッド・ワーク
元FBI犯罪心理分析官VS猟奇殺人鬼、戦慄のサイコ・サスペンス!
というふれこみだったが、どんなもんでしょう。

殺人を繰り返し、そのたびに現場に血のメッセージを遺す猟奇的殺人鬼。
FBIのベテラン分析官テリー・マッケレイヴ(クリント・イーストウッド)は、ある日現場近くで犯人を追い詰める。
身の危険を感じてとっさに逃げ出す殺人鬼。
追いかける心理分析官。
息詰まるチェイスが展開するか……と思ってみていると、どうもテリーの旗色が悪い。
演じるイーストウッドはなんといってももう70を超えているのだ。
現役の警察官を演じるのにはちょいとムリがある。
引きのシーンではスタントでカヴァーできるが、アップのシーンになると、見るからに苦しそうだし、第一走れてない!
おいおい、ロジャー・ムーアの007じゃないんだよ、大丈夫かよ……と思ってみていると、なんとテリーはあと一歩というところまで犯人を追い詰めながら心臓発作を起こして人事不省に陥ってしまうのだ。

ネタだったんかいっ!!

2年後、心臓移植によってなんとか死を免れたテリーのところに、ある日女がやってきて、妹を殺した犯人を捕まえてくれと依頼をする。
「オレはもう現役を引退したんだ」と断るテリーに
「あなたの心臓は私の妹の心臓なのよ!」

全米で100万部を超え、アンソニー賞を獲得したマイクル・コナリーの小説を、『L.A.コンフィデンシャル』でオスカーを受賞したブライアン・ヘルゲランドが脚色、イーストウッド自身が製作・監督・主演を努めた。
しかし前述のようにイーストウッドはすでに72歳。アクション・シーンは見るのがちょっとつらい。
連続猟奇殺人犯の見当もついてしまうし、第一、『羊たちの沈黙』のバッファロー・ビルのような、戦慄を催すようなキャラクターでもない。

ハリー・キャラハンは好きだが、そんなに思い入れのない自分としては、主人公をもう少し若い俳優に譲り、サスペンスを盛り上げて欲しいという気がした。
このあと『ミスティック・リヴァー』でアカデミー主演男優賞・助演男優賞をもたらし、そして今年は『ミリオンダラー・ベイビー』で、アカデミー作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞とかずかずの栄光に輝くイーストウッドにしては凡庸な作品。

2002年 ワーナー・ブラザーズ 110分
DVD シネマスコープ・サイズ(スクィーズ)
画質=★★★★ (最高は★5つ、☆はおまけ)
字幕の大きさ=中

2005/03/15(火) ジェフ・ベック紙ジャケ
やっとソニー・ミュージックの「紙ベック」第2期を購入した。

第1期は5枚すべて買ったが(このページの1月19日の項参照)、今回は2枚だけ。
「紙ジャケ探検隊」の掲示板では『ワイヤード』と『ライヴ・ワイヤード』の2枚!と宣言したのだが、実際に買ったのは『ワイヤード』と『ゼア・アンド・バック』になってしまった。
『ライヴ・ワイヤード』を買おうと思っていたのは、「シーズ・ア・ウーマン」のライヴ・ヴァージョンが入っているからだが、紙ジャケ購入前に久しぶりにアナログを引っ張り出して聴いてみたら、あまりよくない(笑)。
いや、ジェフ・ベックに関してはそうでもないのだが、マックス・ミドルトンのキーボードがあまりよくないのかな。
ま、アナログ持ってるからいいや、になってしまったのである。

じつは大顰蹙を覚悟で小声でちょっというと、ぼくは『BBA・ライヴ』もあまりいいとは思わないのだ。
あのときはとにかくジェフ・ベックが来る!というので、みんな大興奮していて、ライヴ当日も演奏がどうとか、芸術性がどうとかいうまえに、あのジェフ・ベックが目の前でギター弾いてる!というその事実にみんな大熱狂していたのではないか。
レコードとして聴いてみると、案外冗長で緊迫感がなく、とくにカーマイン・アピスのドラム・ソロは退屈です(笑)。

だいたいドラム・ソロというのは聴くものではなくて見るものなので、ジンジャー・ベイカーのソロだってクリームの全盛期にはすごいテクニックだと思っていたのに、今となれば退屈でしかない。
ぼくにとって聴いてもスリリングなドラム・ソロというのはマックス・ローチだけだ。

ところで今回の紙ジャケ、ほんとうにソニーが愛情をもって作っているのがわかる。

写真でジャケットの質感がわかっていただけるか心配だが、インナー・バッグやエピックのレーベルだってこだわりの再現らしいし、なんといってもジャケを収納する糊のついた外袋までこだわっているのだ!
なにが哀しいって、あの外袋を開けるときのペリペリペリ……っていう音ほど哀しいものはない。
こんどのソニーの外袋は音がしないんです!
参りました(笑)。

2005/03/12(土) 植草甚一スクラップ・ブック
ジャズを夢中で聴いていた70年代に、好きでよく読んでいた本がある。
それが植草さんの『スクラップ・ブック』シリーズで、最近復刊されているらしい。

植草甚一さん(1908-1979)は映画評論家でありミステリ評論家、そしてジャズ評論家でもあった人だ。
ぼくが学生だったころは晶文社から『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』とか、『ジャズの前衛と黒人たち』とかいうエッセイ集が出ていて、読みたいのだけれど、どれも分厚い本で値段が高い。いつも本屋に行って立ち読みしているうちにスクラップ・ブック・シリーズ全41巻が出たのだった。
第1回配本は第13巻『バードと彼の仲間たち』で、四六判並装250ページで780円である。もう発売日に買って夢中で読みましたね。

今日は第12巻『モダン・ジャズのたのしみ』収録の「レコードを買いだしたころの話をもう一度」の一部を紹介しよう。

ぼくは古本屋あさりがすきなので、古レコード屋はないかと思い、そのころはまだ読んでいなかったスイング・ジャーナルのバック・ナンバーを買って、その広告に出ているレコード店の番地をたよりに歩きまわったが、たいていは潰れていた。そのうち友人が新宿にマルミという店があるから行ってごらん、と教えてくれた。
 マルミ・レコード店へはじめて行ったのは、1956年の10月の或る夜だったと思うが、どれを買ったらいいのかわからないのが、いっぱい飾ってあるのでビックリした。けれど1枚3000円するので、ほしいけれど買えない。見ると隅のほうに格安品があったので、モンクの25センチ盤を買った。
 マルミの店にたくさん飾ったレコードを見たときだった。たとえば女の人が呉服屋へ行って、いろんな柄のために迷ってしまうのと同じような気持ちになっているのではないかと思った。あとになってからジャズ・ファンの山崎俊男さんに、どのレコードを買ったらいいか教えてもらったが、とにかく迷ってしまい決心がつかないのである。マルミにもそのころは古レコードがすこし置いてあったので、最初のあいだは、そればかり買っていた。(中略)
 こんなふうにレコード店がよいしているうち、1957年4月号の「映画の友」に、はじめてモダン・ジャズの原稿を書いたのだった。そしてそのとき通算どのくらいレコードを聴いたか計算してみたところ、約半年のあいだにモダン・ジャズを聴いたのが600時間で、レコード店とジャズ喫茶にいた時間が200時間だったという見当がついた。
 このときの原稿が久保田二郎さんの目にとまって、スイング・ジャーナルに書くようになったが、ジャズの原稿をつづけて書くなんていう考えは、まったくなかったので、これでぼくの生活が、だいぶ変るようになった。それは、いま考えてみると、ほんとうにいいことだった。


だれでも、あたらしい音楽や趣味に夢中になるときって、こんなものですよね(笑)。

ちなみに植草さんが亡くなった後、コレクションされていた膨大なジャズのレコードを引き取ったのはタモリだったそうだ。

2005/03/09(水) JFKの暗殺とブリティッシュ・インヴェイジョン-2
ロックの歴史が、ビル・ヘイリーと彼のコメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」から始まったということについては、賛否両論あると思うが、この曲が映画『暴力教室』の主題歌として用いられたことは象徴的だと思う。
つまり、ロックンロールはその初期から大人社会に反抗的な子どもたちのものであり、既成の価値観に懐疑的な若者たちのものであり、反体制的であったということだ。
50年代を代表するスターになったエルヴィスは、リーゼントにぴったりした革のパンツで腰をくねらせながら「監獄ロック」や「ハウンド・ドッグ」を歌って「良識ある大人」たちから顰蹙を買い、つづいて登場したボブ・ディランは、しゃがれた声で「風に吹かれて」や「ハティ・キャロルの淋しい死」を歌って、保守的な大人たちから目の敵にされた。
60年代の日本で「エレキを弾くのは不良だ」といわれたのもたぶん似たようなことだったのだろう(笑)。

さて、ここから先は思いっ切り私見になるのだが、いずれにしてもロックンロールに熱中することは若者の特権ではあったが、いわゆる「良家の子息・子女」には許されないことであった。
そこに英国から登場したビートルズは、長髪と細身の襟なしスーツという外見上の奇抜さはあったものの、礼儀正しくユーモアがあって、紳士の国から来た若者らしく、不良っぽさは感じられなかった。
彼らの歌う唄は「君の手を握りたい」とか「彼女が愛してるのは君だよ、イエイエー」というような、明るくてノー天気なもので、ブラック・ミュージック特有の「腰を振って、ベイビー、ひねって叫んで!」というような性的暗喩を持つ唄でも、彼らが歌うと健康的なダンス・ミュージックに聞こえたから、彼らたち・彼女たちは安心してビートルズに熱狂できた。

そして何よりビートルズの音楽は、ケネディ大統領の暗殺や泥沼化するベトナム戦争というような、当時のアメリカがもっていた時代の閉塞状況とは無関係であったがゆえに、突き抜けるようなあっけらかんとした明るさがあったのだ。
それは陰鬱で息が詰まりそうな日常を(少なくとも音楽を聴いている間は)打ち破る力があった。
ビートルズの全米上陸を機に、ブリティッシュ・インヴェイジョンが忽然として64年のアメリカに起こったのは、こうした背景があったのではないかと思っている。

みなさんのご意見をお待ちしています。

参考文献
三浦久 著『追憶の60年代カリフォルニア すべてはディランの歌から始まった』
平凡社新書 018 1999年 

2005/03/08(火) JFKの暗殺とブリティッシュ・インヴェイジョン-1
講談社から創刊された『ロック栄光の50年 Rock In Golden Age』という雑誌が、リンクを張らせていただいているいくつかのサイトで紹介されていたので、本屋に行ってみた。隔週刊で全30巻、すべて購入すると22,000円ほどになるので、眺めるだけで帰ってきたのだが(笑)、興味深かったのは、最初がケネディ大統領の暗殺から始まっていたことだ。

ぼくはビートルズを先頭にしたブリティッシュ・インヴェイジョンのすさまじさは、じつはJFKの暗殺直後という時間的な要素が大きかったのではないかと思っているので、この編集にはおおいに納得した。
今日はそのことについてちょっと触れてみたい。

1955年から2005年までの50年のロックの歴史を語るときに、創刊号をどの時点にもっていくか。
それをビートルズがアメリカに初上陸して、全米にビートルズ旋風が巻き起こった1964年に設定するというのは、しごく当たり前の発想だと思うのだが、1964年の号を1963年11月のケネディの暗殺から始めるというのは、よく考えるとふつうではない。
創刊号の巻頭のインパクトを狙ったと考えられないでもないが、なんといってもロックの歴史を概観する雑誌である。
ブリティッシュ・インヴェイジョンがどんな時代のどんな世相のなかで起こったか、この雑誌はそこをきちんと衝いていると思う。

ここに1冊の本がある。ご自身がシンガー・ソング・ライターでもあり、ボブ・ディランやブルーズ・スプリングスティーンの訳詞でも著名な三浦久さんの『追憶の60年代カリフォルニア すべてはディランの歌から始まった』(平凡社新書 1999年)という本である。
三浦さんは高校生だった1963年にカリフォルニアに1年間留学していた。そして事件は起こった。
「その日」のことを三浦さんは次のように書いている。

1963年11月22日、ぼくはカリフォルニア州サンタローザ、モンゴメリー高校で、4時間目のタイピングのクラスを受けていた。
 ミスター・ラブがストップウォッチのボタンを押し、「スタート」と叫ぶと、教室中にタイプライターの音が一斉に響きわたる。
 (中略)しかしその日、ミスター・ラブの「ストップ」という声が聞かれることはなかった。「スタート」と共に一斉にタイプライターが唸りだしたが、突然、ラウドスピーカーから流れてきた校長先生のミスター・ランキンの声によって中断されたのだ。
 「テキサス州ダラスで、われわれの大統領ジョン・F・ケネディが撃たれました。病院に運ばれました。危篤です」
 そのアナウンスが流れた途端、教室のあちこちからすすり泣きが聞こえてきた。隣にすわっていたシェリルも泣いていた。ミスター・ラブは「授業を続ける気にはなれない」と言って腰をおろしてしまった。誰も一言も話さなかった。しーんとした教室にすすり泣きだけが聞こえていた。10分も経っただろうか。長い時間が経ったような気がした。でも、ひょっとしたら5分ぐらいだったかもしれない。再びラウドスピーカーからミスター・ランキンの声が聞こえてきた。
 「われわれの大統領ジョン・F・ケネディが、たった今ダラスの病院で亡くなりました」
 それを聞いて、今まで泣いていなかった者も泣き出した。もの凄い泣き声である。校長先生の「直ちに授業を打ち切り全員家に帰るように」という指示が聞こえないほどであった。泣いていないのは、おそらくぼくだけだっただろう。大変な事が起こったということは分かったが、彼らと一緒に泣くことはできなかった。そして、日本の首相に同じ事が起こったら、当時首相は池田勇人だったが、日本の高校生はどんな反応を示すだろうかと考えた。非常に驚きはするだろうが、泣き出す者はいないだろう、そう思った。

 (中略)ケネディ暗殺の後、アメリカは沈鬱な雰囲気に満たされた。ぼくの周りでも、どこへ行っても話題はそのことばかりだった。その頃である。暗い雰囲気を吹き飛ばすかのように、軽快なビートのある歌がラジオから流れ始めたのは。まだ英語をよく聞き取ることができず、コマーシャルの歌と普通の歌の区別さえできないこともあったが、その歌には身体が反応した。それがビートルズの《抱きしめたい》だった。


長くなったので続きは明日…。

2005/03/05(土) JAZZの愛聴盤-12
30年も前のことになるが、チャールズ・ミンガスの『ミンガス・プレゼンツ・ミンガス』の国内盤が発売される夢を見たことがある。

そのころ、このアルバムは所謂幻の名盤であった。
ミンガスに名盤といわれるものは『直立猿人』を筆頭に数え切れぬほどあるが、『ミンガス・プレゼンツ・ミンガス』は
キャンディドというマイナー・レーベルであること、エリック・ドルフィーが参加していること、有名な「フォーバス知事の寓話」が収められていること、この3点から特に幻の名盤の誉れ高いものであった。
今のようにインターネットも、レンタルのCDショップもない時代で、いかに素晴らしいアルバムであるかという評論や記事を読むにつけ、レコードを聞きたくて聞きたくてしょうがないのだが、長い間廃盤で手に入れることはほとんど無理だった。

ところがある日、何気なく新聞のテレビ欄を眺めると、いちばん右端に大きく、
「『ミンガス・プレゼンツ・ミンガス』ついに発売!」
と書いたビクター音楽産業の広告が載っているではないか!

やったー、と大興奮して目が覚めた。
夢だったのである。

それからどれくらいたっただろうか。ついにほんとうに国内盤が発売される日がやってきた。
発売日に手に入れて、家に帰ってターンテーブルに載せるときの胸の震えは今でも忘れられませんね。
そして、「フォーバス知事の寓話」は聞きしに勝る大名演だった。

"CHARLES MINGUS PRESENTS CHARLES MINGUS"
CANDIDO 9005

2005/03/01(火) サイト・オープン1周年のご挨拶
昨年の2月28日にこのサイトを立ち上げてちょうど丸1年経った。
そのあいだに7万を超えるアクセスをいただいた。ありがたいことである。
こうして1周年を迎えられたのも、毎日のように訪れていただいたり、また掲示板に書き込んでいただいたりしているみなさんのお陰であって、感謝に堪えない。

そもそも自分のサイトを立ち上げたのは、ビートルズのLP盤『LET IT BE...NAKED』のEU盤と国内盤を比較する記事をだれかに読んでもらいたかった、というすごくショボイ目的だったのだ。

それが思いがけずも多くのみなさんに褒めていただく結果となり、だんだん欲が出てきて、あれもこれもやってみたくなってしまった。
当初は100インチのスクリーンを入れて1年ほどしか経っていなかったため、もっとホーム・シアターの記事を多くするつもりだった。
またJAZZのアルバムについても積極的に取り上げていくつもりだった。
サイト名をMUSIC & MOVIESとしたのもそういう心積もりの表れである。

ところが立ち上げてちょうど1か月後にYAHOO!カテゴリーに登録され、それがビートルズのカテゴリーだったために、いきおいサイトの中心がビートルズになってしまった。
つい7〜8年前からほそぼそとアナログ盤をコレクションし始めたぼくのような人間が主催するサイトだから、間違いやわからないことだらけなのに、みなさんに支えられてここまでやってこれたのは僥倖としかいいようがない。
ほんとうにありがとうございました。

こうやって1年経ってみると、やはりサイトの経営にもひしひしと難しさを感じる。
また初心に返って新たな1年を踏み出すことにしよう。

今後ともよろしくお願いいたします。


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