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2002年7月
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2002/07/01(月) side A★ ひとりぽっちのライオンと小さな女の子のおはなし
サバンナの中にポツンとある、忘れ去られた神殿に、ライオンは長いことひとりぽっちで暮らしていました。ある日その神殿に、小さな女の子が来ました。

「いらっしゃい、でも私はお腹がすいているのできみを食べないといけないんだよ」

小さな緑のトランクと、小さな熊のぬいぐるみを両手にさげた女の子は、ちょっと困った表情を浮かべてからこう言いました。

「このトランクにはお菓子がいっぱい入ってるので、それを食べてからにしませんか?」

小さなトランクには思いもよらないほど、美味しいお菓子がたくさん入っていたので、ライオンはそれを食べて、満足して眠りました。

何日か経って、ライオンはまたお腹がへってしまいました。
「悪いんだけど、そろそろきみを食べる時がきたようだね。

「このトランクには、丈夫なナイフが入っています。このナイフで木の実をたくさん採って来ますから、それを食べてからにしませんか?」

木の実はお肉のような味がして、ライオンはそれを食べて、満足して眠りました。

何日か経って、ライオンはまたお腹がへってしまいました。
「悪いんだけど、そろそろきみを食べる時がきたようだね。」

「このトランクには、1発だけ撃つことの出来る拳銃が入っています。この拳銃で可哀相だけど動物を取って来ますから、それを食べてからにしませんか?」

女の子がちょっとべそをかきながら、連れて来たもう命の無い動物の肉は、とても美味しかったので、ライオンはそれを食べて、満足して眠りました。

何日か経って、ライオンはまたお腹がへってしまいました。
「悪いんだけど、そろそろきみを食べる時がきたようだね。それともまたトランクから何か出してくれるのかな?」

「このトランクには、もう私が大好きなしゃぼん玉しか入っていません。しかたがないので、私を食べて下さいね」

しかたがないので、ライオンは女の子を食べてしまいました。

「まだまだトランクから何か出てくる気がしたのに残念だな・・・」

女の子を食べてお腹が大きくなったライオンは、大きなあくびをしました。その口からは、食べられる時に、女の子が大切に握っていたしゃぼん玉が、大きな円を創って、風に乗って飛んでいきました。

そのしゃぼん玉を見ていて、なんだかライオンは悲しくなりました、目から涙が出て、いつしか小さな熊のぬいぐるみを抱き、緑のトランクを叩きながら、しゃくりあげて泣いてしまいました。

ライオンの口から、そして鼻からもしゃぼん玉がたくさん生まれて、サバンナの青い空へ、昇っていきました。


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