|
2004/03/18(木)
卒業写真
|
|
|
毎年この時期になるとラジオで必ずかかる歌がある。輝く日々を、少し過ぎてからめくる、卒業アルバムを歌ったその歌に、今の私は、ちょっと嫉妬したりする。 丸で囲まれて、目を半分閉じ、微笑んでいるというより、口を半分開け、呆けているっていうか、どちらかと言うと酔っているような、間抜けな表情の私がいる。クラス写真を撮る日、学校を休んだ。そして、欠席者を丸で囲む写真を撮る日も私は学校を休んだ。 その写真は、セルフタイマーで20枚近く自分で撮って、一番私に似ていない私の写真を選び、アルバム編集員に笑われ、説得され、呆れられながら、採用された。 UGのアダルトビデオでは、ほとんど顔は出ていないけど、撮影のイベントでは私は素顔を晒した。そして、デートクラブでは何枚ものプロフ写真を晒していたし、今でも、お店のフロントに来れば、お客さんに選んで欲しい、媚びを売りながら、清純を売りにする、ソープ嬢らしい私の顔を見る事が出来る。 俺、**に住んでいるんだ。」中年のお客さんが、そう話始めた時、最初はあまり気にしていなかった。その街には*0万人を越える人が暮らすのだし、今までにも何人もその街に住むお客さんはいた。何度か、指名してくれたお客さんは、ちょっと溝の出来た、娘さんの事を話し出す。 「女のくせに、背伸びをした進学校に行って・・・・」 「成績が下位になって、遊ぶようになって・・・・」 「年が近いから判るかも知れないと思って・・・」 そして娘さんの名前を何気なく言われた時に、私はこのお客さんにどこかであった気がしていた事が確信になる。小学校時代にはお誕生会にも行っていた、同じ高校に通う友人のお父さんだった。そして今でもいいお客さんだ。 その日から、私は顔を晒す事が本当に怖くなった。なにげなくめくる卒業アルバムに、名前付で出ている娘の友人が、自分がソープで指名している女の子だったら、どんな気持ちになるのだろう? その日から、レンズが向くと反射的に顔をそらし続けた私が、卒業アルバムに載っているのは、その丸い囲みのクラス写真だけだった。 思い出は確かにある。楽しかった事もたくさんあるし、大切な友人も居る。でも私には、本当の日々が無い。本当の私の暮らしを知る人は、そのアルバムの中には居ない。 丸く囲まれて、変な顔をしている私を、友達だと思ってくれたみんな、教え子だと思った先生たち、ごめんなさい。ほんとの私は、こんな奴です。
|
|
|