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2004年6月
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2004/06/18(金) side A :   The rising sun
あの日、父の日記にあった、朝日を見たくて峠を登った。

ヘッドライトの狭い光の中に浮かぶ初めて走る道は、思わぬRのカーブが現れて、思い切り倒しこむ愛車は、何度もステップを擦って悲鳴をあげる。皮のグローブの中の手も、汗が滲んできて、でもカーブの出口にいつも視線を投げて、走り続ける。

登り傾斜が緩やかになったことを、エンジンの音が教えてくれ、身体も気付く。小さな展望用のスペースにバイクを止めて、ヘルメットを脱いだ髪は、重い雲の湿度を感じる。

もう、どうでもいいやって思っていた。もう帰らないような気もしていた。でもその前に、父の走った道を、少しだけ見ておこうかなって思って出た旅だった。

雲の向こうが少しだけ明るくなってくる。でも太陽は雲の向こうで、雲は厚い。

やっぱりね、やっぱりそうなんだよね、って呟きながら、ブーツで小石を蹴る。ぽーんって跳んだ小石は、崖から転げて落ちていく。

風が強くなる。強い風が、髪を嬲る。ライダースのポケットから取り出したゴーグルをかけて、手すりにもたれかかる。風はますます強くなる。

雲が突然流れ始めて、少しずつ空が見えてくる。朝靄は谷に満ち、見る見るうちに風は雲を追い、稜線から少し上がった、父の書いていた朝日が昇る。

きれいだった。

そして、私は、20歳の誕生日を迎えることができた。


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