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2004年5月
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2004/05/19(水) side A :   雨 そして つつじ  
ツツジの花の色が、雨に沈んでいる。

ポツリポツリと波紋が広がっていて、今から露天風呂でお客さんと交わると、後で、髪を洗わなくてはならないなぁなんて、ちょっと憂鬱になる。

遠く海も望めるその部屋の露天風呂は、街の全景を見渡せる。でも、低い塀から身を乗り出さなければ、どこからも見えないように造られていて、珍しくお客さんも初めて来たようで、「こりゃいいな、こりゃいいぞ。」とご機嫌だった。

ポチ袋に1万円のチップを入れて、それをティッシュでもう一度包んで、挨拶の終わった仲居さんに私が渡す。お客さんは床の間を背に、お礼の言葉を軽く受け流して、鷹揚にうなずく。鍵も無い玄関の扉が閉まる音が聞こえる前に、お客さんは服を脱ぎ捨てて、露天風呂へ歩いていった。

一度交わってから、何故だか今日はモエを開け、飲み終えたお客さんは、布団もかけて軽いいびきをかいていた。私は、少し濡れた髪で、浴衣を肩にかけ、椅子に座って本を読んでいた。

雨はすこしずつ強くなり、波紋は、水面を覆いつくす。打たれるつつじの花は、少しずつうつむいていく。


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