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2004年8月
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2004/08/19(木) side B:   竹林 あるいは 蝉の声
ヒグラシの声が湧き上がる夕日に染まり始めた空には、気の早いいわし雲が流れている。

あれほど強い陽射しの中で聞こえていたミンミン蝉の声は低くなって、六時を過ぎると、今日はもう夕暮れが始まる。

夏休みに入って、最初に入れた長い仕事は、初めて飛行機で移動する貸切外出だった。

その宿は、竹林の中にあって、どんな仕掛けになっているのか、古い蚊取り線香がくゆっているだけなのに、殆ど蚊は居ない。

着いてすぐから仕事は始まり、離れの露天風呂はどこからも見えないので、色々な形で、私達は交わる。

湯船で、洗い場で、テラスで、前から、後ろから、横から、考えられるすべての可能性を試してみるように、お客さんは私に刺さる。

もう10回以上外出はしているし、個室で交わった回数を入れれば、100回近くにはなっているはずなのだけれど、場所が変われば、また新しい性癖は現れて、すこし私は困惑もする。

お互いにツボはある程度判っているし、どのくらいの回数、復活できるかも暗黙の了解はあって、その限界まで私達は、交わり続ける。

「ふぅ、満腹だ。」

お客さんの合図で私も眠る。

朝は食事前にも交わって、布団を上げた後も、またお風呂で交わる。

竹の葉を透かしてしまうほどの太陽が照りつけはじめ、聞いた事の無い蝉が、「シャアシャアシャ」と大声で鳴き始める。

「あぁ、クマゼミだな、関東は少ないから」
お客さんが私の表情に気付いて、ポツリと言う。

テラスの端の椅子に、さっきまで身に着けたまま裾をあげて、交わるための小道具にもしていた浴衣が脱ぎ捨ててある。

「抜け殻」

なんだか、そんな言葉が浮かんだ。


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