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2004/04/02(金) 新しい靴
あの春に、父は自殺して、悲しむ暇も無く、母は心を病んで入院してしまった。最初はおばぁちゃんからお金を貰って、銀行に支払いに行ったり、どんどん大きくなっていく妹や弟の身の回りの物とかを買っていたのだけれど、ある日、夕食のお買い物に行こうとおばぁちゃんに声をかけると
「ゆかちゃん、もうお金が無いんだよ」
とポツリと言われた。
判ってはいた。父はもういなくて、入ってくるお金はおばぁちゃんの少ない年金だけで、私はコンビニでバイトはしていたけれど、学校が終わってから入るシフトで貰えるお金はたかが知れている。
父が親しかった弁護士さんの尽力で、お家も直ぐに追い出される事だけは防げていたけど、その日もどんどん近づいてきていた。
その時、まだ、決心出来ていない事があった。偶然の出会いから、私はUGの裏ビデオに出る話が進んでいてたのだけれど、企画を見せられて、「これでどう?」って確認されて、私の方からお願いした事でありながら、最終的な返事を一日延ばしにしていた。
「あっ、少し私が持ってるから、それで買い物してくるね!」「すまないねぇ・・・・」
朝起きたら、何かが変わっていて欲しかった。父が逝ってしまったのが、夢だとは言わないまでも、解約してしまっていた生命保険から、手続きのミスで、お金が降りるとか、おばぁちゃんが実は、すっごい額の貯金を持っていて、「今まで良く頑張ったね、もうお金の心配はいらないよ」ってニコニコ笑っているとか、父の遺品の背広のポケットから、宝くじの一等当たり券が出てくるとか、色々色々考えた。
でも、そんなことは何にも起こらなくて、少しづつ現実が近づいてきていた。
買い物に行こうと、玄関に脱ぎ捨てられた弟の靴を揃えようとして、底が減ってしまって、親指の処はもう布が薄くなり、以前の弟なら絶対文句を言っている事に気付く。今までマークとかにこだわっていた、ちょっとオシャレに興味が出てきていた妹の靴は、「これでいいよ」って私とダイクマで買った、390円のスニーカーだった。そして履けるサイズの靴はそれだけしか無かった。
幾つ朝が来たって、何かが変わることはないんだなぁ、って思って、私はスーパーマーケットの横にある公衆電話から、ビデオに出ること伝え、それから41日目に処女じゃなくなり、3ヶ月後にはカラダを売っていた。16歳だった。
昨日、新学期用の靴を三人で買いにいった。二人とも遠慮して、高い靴に手を出そうとしない。
「大丈夫だよ、おねぇちゃんバイト頑張ってるの知ってるんじゃン、二人とも!」
3年前より、サイズの大きくなった新品の靴が玄関に三足並ぶ。妹も弟も、もう子供サイズじゃなくて、大人の靴だ。今までの通学用の何足かの靴も、決して履けないほどくたびれている訳じゃないし、お出かけ用の靴も別にある。
暮らしは少しづつ落ち着いてきた。少しいびつな形だとしても、妹と弟はそれぞれ進級し、塾にも通い、妹はクラブ活動が楽しそうで、弟は地元のスポーツチームで学年のトップを切ってレギュラーになった。
もうすこし、もうすこし、このままでいよう。
でも、朝がきたら、変わっているかも知れないって、今でも思いはするんだけれど


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