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2004/07/02(金)
親不孝だと思わない?
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「親不孝だと思わない?」ソープで働き始めた頃、お客さんに何度も言われた。 父の自殺をひとつのきっかけとして、他に何も持たなかった私は、カラダをお金に代えるようになった。、妹と弟の姉として、そして病気になってしまった母を、そして自殺した父の愛した家を守りたくて。 でも、少し悲劇のヒロイン気取りで、仕事を始めた私は、すぐに行き詰った。私はお客さんに口ごたえをする。なんにも知らないのに、こんな頑張ってるのにって思いながら。 、 「親の借金で、やってるんだよ。子供不幸は親のほうだよ」 「ハイハイ、よくある話だね、さぁ足を開いて」とお客さんは行為を始める。 「父が自殺して、母が入院してるからこれしか仕事、選べなくて」 「ふーーん、そうなんだ。寂しいだろ?次は外で会わない?」と無料の天外デートに誘われる。 「親に稼ぎが無いんで、妹と弟の学費も私が稼がないと」 「おぉ!偉いね!お小遣い欲しいだろ?生でやらせてくれたら考えるからさ、どう?どう?」っとSを外そうとする。 なんて嫌な人達ばっかりなんだろう?なんでこんな仕事しなくちゃならないんだろ? 私は、大好きだった父を、少しずつ恨むようになっていった。 辞めたくて堪らなかった。毎日、毎日が嫌で嫌で堪らなかった。お店の控え室でも殆ど口をきかずに、いつもすみっこでうずくまっていた。上目遣いに女の子たちを眺め、なんでこんな事してるのに、笑えるんだろうって、思っていた。 そんな私に、声をかけてくれた先輩がいた。出勤日数は少ないのに部屋持ちで、いつもTOP3に入っている。殆ど指名で埋まっているのに、短い待ち時間も控え室に降りてきて、みんなの私事や、お客さんとの様々な対応についても、相談を受けている。 その先輩にはホントの歳もお見通しだったし、まるで手に取るように個室での私の仕事の姿もお見通しだった。そして言われた。 「お金の価値が判ってないね。お金の大切さが判ってないね」 反論した。今の暮らしがどんなに大変で、どんな思いをしてこの仕事をしているのか、泣きながら話した。 「私は、解った。でもお金を払うお客さんには関係ないよ、そんなことは。」 そうだった。その事に気付いていなかった。あんなことをするんだから、お金はもらえて当たり前だと思っていた。それから、たくさんのことを先輩から学び、少しずつ他のみんなからも色々教えてもらえるようになった。 お客さん達も、普通に暮らし、父であり息子であり、伴侶であったり恋人であったり、上司であったり部下だと言うことがやっとわかってくる。そして、自分の何かを確かめるために、あるいはバランスを保つために、ソープへ来る。 私は癒すことは出来ないけれど、受け止める。ただただ受け止める。 6月は父の日があるので、お客さん達も、こんなことを口にする。 「いやぁ、頑固でよく拳骨もらったよ。今は孫に甘くて、俺が叱ってる。わはは。」 「忙しくて殆ど遊んでもらえなかったよな。嫌いだとも思ったよ。でも自分がその立場になって初めて、親父と飲みたいと思った。って今は口実作って、飲むのがけっこう楽しいんだ。」 そんなそんな、今はお父さんのお客さんたちが、お父さんたちを語る。 そして聞かれる。「親不孝だと思わない?」 「ええぇ?うちはオヤジを練習台にしてるから、喜ばれるよ。って挿入だけしないけど♪」 「馬鹿言ってんじゃねぇよ、わははっ!」 いつのまにか、父への憎しみは薄れていて、大好きな父が戻ってきた。 父さん、やっぱり好きです。
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