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2002年8月
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2002/08/02(金) side A★そしてまた10日
空が真っ暗だ。3時過ぎに歩くキャットストリートは、どのお店もネオンや看板に灯を入れていて、思わず時計を確かめる。夏休み旅行で東京見物に来た女の子たちが、幾つものグループで通りを歩いている。何故だか判る。この街で暮らしている子達と、この街に遊びに来ている子達はどこかが違う。その子達を追い越して、運送便のお兄さんやこの街で働く人達が、傘もささずに小走りで行き交う。私は約束があって、久しぶりに渋谷で電車を降りて神宮前まで来た。

やっと、身体の痛みは薄れて来た。でも、目覚めて眠れない夜もまだある。

彼女は、お店の先輩で今年の春、上がった。今は資格を生かして、昼の街に溶け込んでいる。無理を言って、会いたがって、理由は言わないそんな私に、即、時間を合わせてくれた。

今度の事は、お店ではあまり話せない。事件ギリギリの本当の内容は、女の子達を不安にするし、控え室でも「ちょっとしたトラブルでお客さんに手を出されちゃった私」はへらへら笑っている。心配してくれる子がほとんどだったけど、「いいな、ちょっと手を出されただけで、休業補償までもらえるなんて」ってあからさまに言う子もいる。へらへら笑っていると、ザックリ切れていた口の中の傷が、引き攣った感じがする。

彼女は聞いてくれた。表参道のカフェの隅の、あらかじめ私を壁向きの誰にも顔が見えない位置に座らせてくれて、私は話した。そしてあの日から今日までの毎日の私も。

「もしなんかあったら、もっと早く連絡する事」

別れ際に彼女はそう言ってくれた。

カフェから出た街は、さらに暗くなっていて、アスファルトを大粒の雨が打ち、空にはイナズマがはっきり見えていた。

彼女は居てくれた。居てくれるだけでこんなに助かるんだなって思いながら、きょうは深く眠れる気がした。今からお店に出た後にではあるんだけど。


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