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2004/10/20(水) side A:    台風の日
見上げる空には、もう台風の色がある。

時々吹く風に、一昨日までのお陽さまに誘われて、やっと咲いた青い朝顔は、灰色の雲の下で花びらを裂かれてしまっていた。

ちっちゃかった頃、近づく台風にちょっとだけワクワクしなかったと言えば嘘になる。

朝は母に起こされて、お味噌汁とコーヒーの香りを感じながら、寝ぼけまなこでシャクシャク歯磨きをし、「おはよう!」って言えば、笑顔の両親から「おはよう!」ってお返事が返ってきて、よいしょって、子供用の椅子に昇れば、そこには美味しい朝ごはんが待っていた。

そんな楽しい毎日に、もちろん不満があったわけでは無いけれど、いつもと違う日を連れてくる台風は、遠足や運動会や、うっすら積もる雪化粧の日と同じように思っていたような気もする。

少しだけ憶えている幼い頃の台風の日は、気圧の変化で喘息の発作が始まったりもしたのだけれど、いつもは帰りの遅い父が早くから家にいて、雨戸を閉め切って、いつもはベランダに並んでいるお花たちに囲まれて、風と雨の音に肩をすくめながらも、ロウソクも用意された夕ご飯は、とても楽しかった。

父と母と一緒だと、外階段の古いアパートでも、少しギシギシはいっていたけれど、雨も風も跳ね返してくれる、狭くてもとっても安心できる場所だったことを思い出す。

そして、そんな日は3人で手をつないで並んで眠った。

父が死に、母が心を病んだとき、私は台風の日の街に投げ出されたような気がした。でも振り返ると、老いた祖母がいて、幼い妹がいて弟がいた。

私にはみんなの手をとって、安心させられるだけの力は無くて、その日までみんなで暮らしていた、雨を凌ぎ、風を遮ってくれたお家だけは無くしてはいけないって、思い込んだ気もする。

16歳になるまで、台風は外の事で、お家にいるだけで守ってもらえた。そして安心でいられた。

私は安心をみんなにあげることはできない。

行って来るね、学校とお仕事に。今日も宜しくお願いします。

お家の「まかせとけっ!」ってお返事が聞こえたような気もした。


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