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2005/01/24(月) side A: 私のいない風景
休日の朝は、焼きあがるパンと、カリッと炒めたベーコンと、エスプレッソコーヒーの香りで、朝が始まる。

ダイニングルームの白木のテーブルのまんなかには、背の低い水盆に、淡い色の庭のお花がアレンジされていて、それを囲んで5枚のナプキンが置いてあり、その前に座った5人は、みんな笑顔で「おはよう」って言う。そして、母の一手間入った、美味しい朝食を食べる。笑顔で。

サークルの公式行事に出かける妹は、チェックのスカートに紺のブレザーを着て、スクールネクタイが誇らしい。同じ学校を目指している、弟は、ちょっと眩しそうにそれに視線を投げ、次の週に迫っている受験の準備に、塾へ向かう。

おばぁちゃんは、日当たりのいい、自分の部屋の窓際に座って、もういくつになるのか分からないほど長生きな、猫を抱いてまどろむ。

残った二人は、おばぁちゃんに「海まで散歩に行くね」って声をかけて、玄関を開く。

水仙の香りと冬の陽射しが二人を包んで、目を合わせた二人は手をつなぐ。

海までの道沿いの家々にも、こんな寒い季節なのに、花々は溢れていて、ここに住む人達の、この街とそれぞれの家への想いが伝わってくる。

海は緑の混じる冬の色なのだけれど、陽だまりに二人で座れば寒くはない。

「いいお休みだね。」
「そうだね、幸せだね」
「結婚してくれて、ありがとう」
「こちらこそ・・・・」
「ゆかも、いればなぁ」
「どっちの?」
「どっちも」

きっと私のいない家族の今日は平穏だ。

おねぇちゃんと私が代わっていれば、「ゆか」が私でなけでば、私が「ゆか」なら、もっと早くいなくなっていれば、きっと幸せな今日がある。

自分で命を絶ってしまった父と、心を病んでしまった母は、私がいない風景なら、きっとこんな休日を過ごしていたんだと思う。

残った家族には、少しでも、平穏でいてほしい。

私がいる風景の中で。


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